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自分の世界を変えるには、ほんのちょっと目線を上げるだけでいい 高山都さん「高山都の美 食 姿 2」

文:菅原さくら、写真:樋口涼

弱さも全部さらけ出して、誰かのきっかけになりたい

――今回も「美・食・姿」の3カテゴリーで、都さんおすすめの習慣やもの選びのコツが、丁寧に紹介されていますね。前作に比べると“心の在り方”みたいなお話が、さらに増えていたように感じました。

 そうですね。じつは「1冊目で全部出しきっちゃったかも……」と思っていて、内容をどうアップデートしていこうか悩んだんです。1冊目をつくった去年と今年で一番変わったことといえば、彼と別れて引っ越したこと。もちろんとてもつらかったけれど、少しずつ乗り越えられてきたタイミングで、ちょうど続編のお話をいただきました。だから、ひとつの別れや前を向く方法の例として、私のお話をするのもいいな、って思えたんです。ライフスタイルだけでなく、弱さも全部さらけ出した一冊になっているように感じます。

――つらいことがあっても日常は続いていくし、すこしでも背を伸ばして暮らしていきたい。そんな前向きな“強さ”が散りばめられた本ですよね。

 本をつくるなかで、“強さ”と“真似しやすさ”はとても大切にしたポイントですね。たとえ身体にいいことだとわかっていても、なにかを習慣化するには、続けていく強さが必要。やりたくてもなかなか踏み出せない人のために、ちょっとでも勇気を持てるような表現とか、試してみたくなるような小さいステップを意識して書きました。

 私自身が、大きな一歩は踏み出せないタイプ。秀でた才能があるわけでもないし、とても素敵な暮らしをしているわけではありません。だからこそ、自分の見ている世界を変えるには、ほんのすこし目線を上げるだけでいいって、知っている。ちょっとだけ先に進んでみたらこんなに心地よい世界があったから、みんなもぜひこっちにおいでよ、私と一緒に楽しもうよ、って気持ちなんです。

――2冊の書籍を発売して、読者のリアクションはいかがでしたか?

 それまでの仕事は美容やファッション、ランニングが中心で、届ける相手がある程度限られていました。でも「美食姿」というカテゴリーで本をつくったら、年齢も属性も、とても幅広い方々に読んでいただけたんです。発売記念のトークショーやイベントといった機会では、じかに感想を聞ける場面も多くて…….。「お料理がもっと楽しくなりました」とか「都さんの真似をして、こっそり走りはじめたんです」なんてことを言ってもらったり。書籍では「最初から思いきり頑張らなくても、小さな一歩をコツコツ続けていけばいい」というメッセージを伝えているんですが、その気持ちがみんなに届いて、なにかを始めるきっかけになったんだなと思うと、本当にうれしいです。

高山都さん流、素敵な本との向き合い方

――書籍のなかでは、都さん自身の読書体験にもふれられています。自身の暮らしに影響を与えた本はありますか。

 ……漫画でもいいですか? よしながふみさんの『きのう何食べた?』(講談社)は、私のお料理のバイブルです。男性2人暮らしの食生活を描いた作品で、気取っていない“日々のごはん”がたくさん出てきます。生きていればいいことも悪いこともあるし、お料理を頑張りたい日も頑張れない日もあるけれど、食べることってとっても素敵なんですよね。特売の野菜を買ったり、冷凍食品を使ったりしてもいい。肩の力を抜いて、楽しく“食べること”と向き合っていきたいな、って思わせてくれます。

――ちなみに、「高山都の美 食 姿」みたいなライフスタイル本は読みますか?

 10~20代のころは小説や漫画ばかりで、ライフスタイル系の書籍を読みはじめたのは30代に入ってからですね。きっかけは、築年数の古い家に住んだこと。この家を自分らしい空間に変えたいと思って、憧れる暮らしをしている方々の本を読みはじめたんです。でも、完璧すぎると真似できなくて、もう写真集を見ているような気持ちになっちゃう……(笑)。

 だから、自分の本では「何を使っているか」ではなくて「どう使っているか」「どう向き合っているか」を中心に紹介するよう心がけました。さまざまなアイテムを紹介しているけれど、どれも「私はこう使っていて、ここがいいと感じてるよ」というだけ。読者の方にも自分自身のお気に入りや、心地よい使い方を見つけてほしいなと思っています。

自分にいい言葉を取り入れたら、邪念にも負けない

――近ごろ読んで印象的だった本はありますか?

 たくさんありますよ。ひとつは、茨木のり子さんの詩集『自分の感受性くらい』(花神社)。なにかの雑誌で「いらだつのを人のせいにするな」といった一節が紹介されていて、はっとしたんですよね。この言葉をずっと手元に置いておきたいと思って、急いで書籍を買いました。

 それから『ココ・シャネルという生き方』(KADOKAWA)は、シャネルの名言が並んだ本。彼女は本当に強くて、ある意味で脆くて、その媚びない生き方に憧れるし、共感できる部分もたくさんあります。自分の生き方を見つめ直すきっかけになった気がしますね。じつは、年明けに引いたおみくじで「邪念は身を滅ぼす」って書いてあったんです。だから……。

――邪念?

 そう、邪念です。人って結構、邪念を持っちゃうの。「なんであの人ばっかり」とか「私はこんなにダメだ」とか、つい考えちゃうじゃないですか。でも、そんな悪い気持ちばっかり抱えていると、余白がどんどんなくなって、余計に身動きがとれなくなっちゃうんですよね。だから、つねに周りをリスペクトして、自分にできることをコツコツやって、邪念をシャットアウトしたいと考えているんです。

 そのためにも本を読んで、いい言葉を取り入れることが大切だと思う。いい言葉はお守りになって自分のなかを循環したり、邪念を吹き飛ばしてくれるから。私にとって本は、そうやって自分をアップデートしてくれるものなんです。読むたびに目標ができて、自分の血となり肉となってくれる気がします。

――都さんの本も、きっとどこかで誰かの一部になっていますね。

 もしよければ、心の引き出しの隅っこにでも、この一冊を入れてもらえたら……って思いますね。冒頭の数ページでは、私が意識していることや考え方を、短いフレーズにしているんです。長い文章にするほどではないけれど、この気持ちを書き残して、読んでくれる方々に伝えたいな、と思った言葉たち。そんなメッセージをふと思い出してもらえたとき、その人の背中を押せるような存在であれたら、すごく幸せです。