1. HOME
  2. 書評
  3. 「ブラック校則」書評 不条理が温存されているこの国

「ブラック校則」書評 不条理が温存されているこの国

評者: 寺尾紗穂 / 朝⽇新聞掲載:2018年09月29日
ブラック校則 理不尽な苦しみの現実 著者:荻上 チキ 出版社:東洋館出版社 ジャンル:教育・学習参考書

ISBN: 9784491035574
発売⽇: 2018/08/03
サイズ: 19cm/260p

ブラック校則 理不尽な苦しみの現実  [編著]荻上チキ・内田良

 2018年の調査で「中学で下着の色が決められていた」と答えた10代が15%もいたという事実は、マスコミでも「ブラック校則」の一部として注目されてきた。しかし、さらに憂慮すべきは01年から13年までの間に「校則を守るのは当然」と考える高校生が倍以上になっているということだろう。疑いを持たないおとなしい生徒、それを良しとする保護者や地域の目。社会全体が管理や規則を是とする風潮の中、理不尽な校則が年間一万人の不登校生徒を生んでいることや、性的マイノリティを追い詰めている実態を描き出す。
 本書が指摘するように、「校則は変えられたよ」と言う改革成功者には「できない人、できない状況もある」と伝え、「ブラックは一部!」と言う人々には「一部の人びとなら見ぬふりをするのか」と問う必要がある。不条理な校則が温存されているこの国で、必要なのは声をからさずにそうした「条理」を周囲と共有していくことかもしれない。