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大歌人の大恋愛、立体的に辿る

牧水の恋 著者:俵万智 出版社:文藝春秋 ジャンル:日本の小説・文学

価格:1836円
ISBN: 9784163908885
発売⽇: 2018/08/29
サイズ: 20cm/290p

旅と酒の歌人・若山牧水は、恋の歌人でもあった。若き日をささげた恋人の持つ秘密とは。高校時代に牧水の短歌に出会って心から共感した著者が、牧水の恋の絶頂から疑惑、別れまでの秀…

評者:サンキュータツオ / 朝⽇新聞掲載:2018年10月06日

牧水の恋 [著]俵万智

 短歌、とっつきにくくなかった。面白い!
 〈山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇を君〉
 テンション高すぎの若山牧水。恋をして、想い人に口づけをしたというノロケた歌なんですけど、「山、海、そして君」ってスケール大きすぎて痛い。でも、その痛さが良い。恋は人を痛くさせるものだ。
 著者の俵万智さんは、この歌の「山を見よ」と「山に日は照る」の間に視線を移す時間があり、海も同様、そして「いざ」にもこれからという時間があり、細切れ感を与えそうな句切れが、むしろ一首を大きく見せていると評価する。
 明治40年から41年にかけて、大恋愛を経験した若山牧水。旅と酒の歌人が、生涯忘れなかった恋の始めから沈静化までを時系列に整理して、発表当時の歌壇の反応や、牧水の書簡なども踏まえて、立体的に事実を辿っていく。探偵が真実を突き止めていくミステリーを読むようで楽しい。