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「世界不平等レポート2018」書評 ピケティらによる最新報告

評者: 石川尚文 / 朝⽇新聞掲載:2018年10月27日
世界不平等レポート 世界不平等研究所 2018 著者:ファクンド・アルヴァレド 出版社:みすず書房 ジャンル:経済

ISBN: 9784622087151
発売⽇: 2018/08/11
サイズ: 26cm/285p

世界不平等レポート2018 [編]F.アルヴァレド、T.ピケティほか

 日本でも4年前にベストセラーになった『21世紀の資本』の著者ピケティ氏らによる最新版の報告集だ。不平等について、「事実に基づく社会的な議論と決定の礎を築く」ことが、本書の目的とされる。
 欧米に加え中国やロシア、インド、中東、アフリカの不平等も分析。この数十年、所得の不平等の度合いは、世界のほぼ全地域で高まっていると指摘する。
 同時に、民営化や財政赤字によって各国で公共財産の割合が減り、政府が不平等を抑える力が低下。個人の富の不平等も、拡大に拍車がかかっているという。
 この傾向を止めるには何が必要か。①累進課税②金融資産の所有者の把握③教育と仕事の機会の平等化④政府の未来への投資??というのが本書の提案だ。
 残念ながら日本への言及は少ないし、文章も決して読みやすくはない。だが、こうした研究の蓄積が、社会に広く伝わることは大切だ。継続して翻訳・出版されることを期待したい。