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「鉄道快適化物語」書評 列車のあらゆる面で工夫と努力

評者: 宮田珠己 / 朝⽇新聞掲載:2018年11月10日
鉄道快適化物語 苦痛から快楽へ 著者:小島英俊 出版社:創元社 ジャンル:産業

ISBN: 9784422240794
発売⽇: 2018/09/20
サイズ: 19cm/270p

鉄道快適化物語 苦痛から快楽へ [著]小島英俊

 とある外国でえらく横揺れする列車に乗ったことがある。夜行列車だったが、車内は蒸し暑く、シートは硬く、床にはゴミが散乱して、とても眠れたものではなかった。日本の鉄道のありがたみをしみじみと感じたのである。
 日本でも通勤電車の混雑に限っては充分に苦痛だけれど、それでも鉄道そのものは相当に進化してきた。
 本書を読むと、台車の技術革新、自動列車停止装置(ATS)の開発から、冷房の導入、トイレの改善等々、安全性やスピードは当然として、居室空間の快適さや設備の充実まで、あらゆる面で工夫と努力が重ねられてきたことがわかる。当初駅員は客より威張っていたとか、指定席もすぐに取れず間違いが多かったなど、サービスの歴史にも触れてあって面白い。
 昨今は各社軒並み高級化路線で、本書もクルーズ列車について章を割いているが、個人的には廉価な寝台列車が復活してほしい。金持ち用の列車はもういい。