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あらゆる雇用が奪われる、未来へ提言 中原圭介「AI×人口減少」

『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』 [著]中原圭介

 少子化による人口減少が進む中で、超高齢社会へとひた走る日本。行き着く先は、過重な税負担と、限界まで達する社会保険料の引き上げという、身の毛もよだつ近未来だ。
 現在はそこに「AI(人工知能)による自動化」という歴史的な大波が重なる。いや、AIは生産性の向上で、少子高齢化社会を救うのではないの?という楽観論を、本書は各種のデータや事例を用いて退ける。そこから浮かび上がるのは、小売り、製造、金融業から弁護士、医師まで、AIが「あらゆる業種の雇用を奪っていく」未曽有の世界だ。
 著者は人呼んで「もっとも予測が当たる経済アナリスト」。果たしてこれら不吉な「カッサンドラの予言」は、覆せるのだろうか。
 要因が複合する少子高齢化の元凶を、著者は子育ての困難な東京への一極集中と読む。そこから導かれる提言は、大企業の本社機能を地方へ分散し、人としての健全な働き方を再構築すること。
 同時に、AIによる打撃を緩和するため、「AI・ロボット税」を設けて、労働市場の急激な変化を抑制。その間に、人間とAIとの共生を図っていくことが必要だという。私たちは今、壮大な実験に放り出されている。=朝日新聞2018年11月17日掲載