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徳川家達の生涯と思想たどる 原口大輔さん、政治活動中心に概観

『貴族院議長・徳川家達と明治立憲制』を出版した原口大輔さん

 江戸幕府最後の将軍だった徳川慶喜(よしのぶ)が謹慎した後、御三卿の田安家から出て16代徳川宗家を継ぎ、帝国議会の貴族院議長を30年にわたり務めた徳川家達(いえさと)(1863~1940)。その生涯を政治活動を中心に概観した『貴族院議長・徳川家達と明治立憲制』(吉田書店)が刊行された。

 著者で日本学術振興会特別研究員(PD)の原口大輔さん(31)は小学生の時、週刊「ビジュアル日本の歴史」で家達の存在を知り、卒業論文にも家達を選んだ。「あまり知られていないのですが、家達は1914年に天皇からの組閣の大命を固辞しているんです。徳川将軍家の子孫が総理大臣になる可能性があったと知って衝撃でした」

 本では、帝国議会上院である貴族院の議長として家達が行った事績や海軍軍縮会議であるワシントン会議(1921~22年)の全権委員就任と関連の「失言」事件、貴族院書記官長を務めていた頃の日本・民俗学の父・柳田国男との確執などを軸に、家達の生涯とその政治思想を紹介していく。

 貴族院議長としての家達は、留学時に見た英国議会を参考に、政治的主張を前面に押し出さず、衆院と貴族院の調整を図るという独自のスタンスを貫いた。「生前の家達は多くの人から『公平』『無色透明』と評され、議長として信頼されていました。徳川宗家が維新後をどう生き抜いたかという視点も含め、もっと光があたるべき人物だと思っています」(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2018年12月12日掲載