市販薬、処方薬に限らず、薬に対しては長らくアンビバレントな感情を抱いてきた。症状改善のため頼りたい気持ちと、強く作用するものを体内にいれることに対する若干の不安と。しかし、今は違う。本作を読んで以降、薬剤師に対する意識が変わったからだ。
主人公は駆け出しの病院薬剤師・葵みどり。数多(あまた)の患者のため、彼女の病院では10人の薬剤師が調剤を行っている。求められるのはスピードだが、訝(いぶか)しい処方箋(せん)や患者の些細(ささい)な変化に気付くや否や行動に移さずにはいられないみどり。ある時は処方箋を巡って医師と対立し、ある時は患者やその身内の不安さえ取り除く。もちろん、医師も看護師も患者の日常を取り戻すべく個々の持ち場で奮戦している。時にチーム一丸となって治療にあたる姿たるや実に頼もしく、お仕事マンガとしての熱量も面白さも十二分。
喫煙とテオフィリン(喘息〈ぜんそく〉の治療に用いられる)の相互作用や薬と飲食物の取り合わせなど、知ってうれしい情報も満載。現在、全国で処理される処方箋の数は1日約220万枚あるそうだ。その疑問点を医師に確認することができる薬剤師という職業の人たちは、我々を医療ミスから守ってくれる最後の砦(とりで)なのだ。=朝日新聞2018年12月22日掲載
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