日本盲人会連合のウェブサイトには、画面を白黒反転するボタンがある。本書を読む前なら、そのボタンの意味がわからなかっただろう。
色がぼんやりわかる程度の弱視の女子高生ユキコの白杖(はくじょう)が、喧嘩(けんか)上等のヤンキー君の尻に刺さったところから始まるラブコメディ。顔に傷のあるヤンキー君を道行く人は避けて通るが、ユキコはまったくビビらない。そんな彼女に一目惚(ぼ)れしたヤンキー君は猛アタックを開始する。
気は強いけど天然なユキコと、ハチ公級に一途なヤンキー君の恋は、見ているこっちが赤面しそう。と同時に、弱視の人から見た世界のありように、なるほどと思う。たとえば雨の日は音や匂いがかき消される、景観に配慮した点字ブロックは見えづらい。一方のヤンキー君はレンタルDVD店のセルフレジに憤る。「これユキコさん ぜってー使えねーじゃん」と。
そこから先がまさに怒濤(どとう)の神展開。ユキコの姉、DVD店の店長、お年寄りの客など各人の事情をきっちり描き、バリアフリーやユニバーサルデザイン、職業意識、家族の責任についても示唆に富む。そして誰もが、異質な人と出会うことで世界が広がっていく。その解放感に胸がすく。=朝日新聞2019年2月16日掲載
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