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30代の独身男性が考える「本当にいい女の条件」 下村一喜「美女の正体」書評

文:ウイ

不定期ですが、月に1回くらいのペースで僕の家でいわゆる「飲み会」があります。「独身であること(バツ可)」「恋人がいないこと」「酒が飲めること」さえクリアしていれば性別年齢国籍宗教は問わないという目も当てられない参加資格なのですが、だいたいいつも8人くらいの男女から4~5人が集まります。たまに恋人ができて不参加になるメンバーもいるのですが、別れると「ただいま」と帰ってくる。もう4年くらい続いている会なのですが、その参加条件から分かる通り、決していわゆるホームパーティーのような上品なものではなく、山賊が村を襲った後に「ガハハッ」とだらしなく笑いながら密造酒を瓶から直接飲み、仕留めた猪や鹿を焚き火で焼いて食うような雰囲気です。たまに言い争いの喧嘩にもなります。
先日集まった5人が、たまたま30代の男だけでした。おでんの練り物を生魚の状態から作ったり、アンコウを捌いたり料理を楽しみ、独身貴族の小銭を使って用意した高い酒で宴が始まったのですが、よくある話題の「どんな人がタイプか」という話になりました。かなりお酒も入っており、各自がワインや日本酒を一本ずつ持っているような中で本音が語られました。今回は女性がいなかったので、本当にめちゃくちゃ本音で話すことができました。今回はその時語られた「いい女の条件」を書きたいと思います。

まずは小手先のテクニックを

おっさんとはいえ全員男。やはりルックスやスタイルから入ります。「俺はクレアラシルのCMをしていた1995年から広末涼子のファンだから」「昔は安西ひろこ、少し前は木下優樹菜、今はゆきぽよ」「世の中には二種類の女性しかいない。長澤まさみか、それ以外かだ」「お前ら、本当は明日花キララが一番好きなんだろ、正直になれよ」と好き勝手な意見が飛び交います。「もっと現実的な話しようぜ」ということになると、次は「My Little Loverの『Hello,Again』をめちゃくちゃ上手に歌う人がいいな」「いや、キロロの『長い間』のほうがグッとくる」「YUIの『CHE.R.RY』でしょ」「いやいや、YUKIの『JOY』一択でしょ」と話していたのですが「結婚」ということを考えた時、内容は非常にシビアになっていきます。
※ちなみに30代中盤~40歳くらいの男性は先ほど挙げた曲をペロリと上手に歌うと簡単に惚れさせることができるので参考にしてください。チョロい。

リアルガチの理想の結婚相手3条件

今回はルックスやスタイルも度外視しています。なぜなら「いい女」を突き詰めると、驚くことに全員「ルックス」や「スタイル」を最後に残さなかったのです。もちろん、好みはあります。僕であれば「笑うと5番まで歯が見える」「メリハリのある美脚」「すっぴんがかわいい」という口にしたら世の中の女性のほとんどを敵に回しそうな条件ですが、本当にいい女を追求し「結婚」を視野に入れ、様々な条件を天秤にかけると、そういった外見のことは問題ではなくなるのです。もちろん「優しい」や「常識がある」という「そりゃそうだよね」と言ってしまいそうな条件も様々な媒体で語り尽くされているので非対象です。そして「料理ができる」なども排除しています。なぜなら「絶対に料理はできたほうがいい」という意見があれば「料理なんかできなくても問題ない」という意見があるからです。あくまで30代の独身男性5人が全員納得したリアルガチの理想の結婚相手の条件を三つまで絞りました。独身を謳歌する30代が好き勝手言っていますがお付き合いください。

稼いだ金を最高の状態で活用してほしい

まずは「税制度や都道府県の補助金、投資や保険や住宅ローンに強い女性」です。のっけから「は?」と言われそうですが多くの男性は「た…確かに…」と納得してくれるはずです。一緒に暮らすにあたって、このへんの知識があるほど頼りになる女性はいません。今となっては少し古い考えになりつつありますが、多くの男性には「家庭を養うのは男」という意識が根強くあります。できれば嫁に労働させたくないな、全部自分の稼ぎでそれなりの生活をさせてあげたいな、という見栄です。特に30代中盤以降の男性はそういった意思が強い人が多いです。そうすると、自分は労働に全力で打ち込めるように、嫁には保険や税金や住宅ローンなどのロジカルな知識が必要なことは「様々なことを検討した結果、まちがいなくこれが一番」と常にベストな選択をしてくれる女性、もしくは選択肢を狭めてくれる女性が頼りになります。知らないと損することがめちゃくちゃあるんです、日本の制度。そして、そういった知識がある人は金銭感覚が狂っていない人が多いです。自分が家族のために稼いだ金を、最高の状態で活用してくれる女性。死ぬほど頼りになります。

うまくサポートしてほしい

次に「外部とのコミュニケーションが上手な女性」です。TPOに合わせて服装やメイクやキャラクターを演じ切ることができる女性のことを言います。ちょっと乱暴な言い回しですが「外面がいい」ということですね。これは、別に「自分の親に安心して会わせることができる」や「適切な近所付き合いや学校行事への取り組みができる」という理由だけではありません。できれば、さらに一歩先のところまで求めています。例えば、何かしらお礼やお返し、ご挨拶をしなければいけない人に対してしかるべきタイミングで適切な行動を忘れずにできる女性です。「そういえば引っ越しのお祝いいただいた〇〇さんにお返ししなきゃね」というサポートです。「甘えんなよ、おっさんたち」という声が聞こえてきそうですが、これも男性の「サポートしてほしい」という想いがあります。

でもやっぱり中身が大事

これまで現実的な二つの条件を挙げさせていただきましたが、最後の条件はちょっとロマンチックです。「自分への愛情」です。男は最後の最後に「自分への愛情」を取ります。料理なんかできなくっても、家事が苦手でも、自分への確かな愛情を持っている女性を選ぶのです。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、家事も料理も容姿も完璧な奥さんの浮気が原因で離婚したバツ1の37歳の男友達が言った「長年一緒にいると、やっぱ中身なんだよね。美人でも、そうじゃなくても慣れる。良く言うと平穏、悪く言うと退屈な、何もない日々の中ではドキドキする機会なんか無くなるの。必要なくなるの。でもそれはしょうがないの。そうすると、やっぱり安心感が一番必要なんだよね」という説得力に未婚の僕たちは首がポロリと取れるんじゃないかというくらい縦に振りました。

三つの条件を挙げさせていただきました。共通するのは「安心感」です。
「てめー、しっかり稼いでこいよ。じゃなきゃ無理だぞ」という意見を承知の上で、この「安心感」こそルックスやスタイルよりもはるかに上に来るべき条件のはずです。

しかしこれは、あくまで「30代の仕事もそれなりにやっている結婚願望がある独身男性たち」が出した結論です。

「最近の若いかわいい子はみんな同じ件」

ここで、もっと広域な意味での「いい女」についてお話します。
本当に結婚したい女性の条件を話し終わった後に話題になったのが「最近の若いかわいい子ってみんな同じ件」です。今の10代の女子はみんな同じところを目指している気がしてしまうのです。
ここからはおっさんのぼやきになるかもしれません。
僕らが10代の頃、広末涼子、竹内結子、篠原涼子、安西ひろこなど様々なタイプの美人がいて、音楽シーンは安室奈美恵、浜崎あゆみ、華原朋美などが全盛期、グラビア界ではMEGUMI、小池栄子、サトエリ、雛形あきこらがおっぱいを武器に雑誌で幅をきかせていました。同級生の女子たちも色々な美人を目指していたような気がします。そこから10年が経過しても綾瀬はるか、長澤まさみ、深田恭子、北川景子、上戸彩など現在の30代には個性的な美人がいます。ここまでは「美人の種類」が多岐にわたっていたような気がするんです。それが、もうひとつ下の世代になると「かわいい」や「きれい」の種類がめちゃくちゃ狭くなる気がしてしまうのです。強いて言うなら「アイドルのようなもの、もしくは韓流」を目指している分母がめちゃくちゃ多い気がするのです。今の10代若者からしたら「いやいや、おっさんたち、今でも色々なかわいい子はたくさんいるよ。知らんだけ。それにおっさんたちの上の世代も同じこと感じてたかもよ」という意見があるんでしょうけど、老いを覚悟で言えば「だいたい一緒っす」と感じてしまうのです。

「美女の幅」狭まった気がしませんか

情報が一気に増えたことが原因ではないでしょうか。スマホやSNSの普及で僕たちが手にする情報量は爆発的に増えました。しかし、それが「美女の幅」を狭めているような気がしてならないのです。情報量は増えたけど、どれも均一な情報な気がするんです。「こうするといいよ」という似通った情報だけが爆発的に増えたんじゃないでしょうか。まだスマホやSNSが出る前、若者の情報源は雑誌やテレビでした。情報量は今よりもずいぶん少なかったけど、各社オリジナリティのある情報だった気がします。

「美女」について知りたければこの本を

ここで、ご紹介したい本があります。下村一喜さんの『美女の正体』です。美女とは何か?について書かれた本なのですが、男の僕が読んでも説得力抜群なのです。外見についても内側についても、これほど的確に「美女」について解説する本を僕は他に知りません。この本を読むと、僕たちが選んだ「いい女の条件」もあながち間違って無いなと感じることができます。この情報が均一化される世界で、女性が何かに気付くきっかけになり得る本じゃないかと思います。最後に、山ほど紹介したい文章の中からいくつか選んで掲載します。

どんな顔が美しいのか、それを決めているのは「社会に流れている空気」なのではないでしょうか。社会が「なんとなく今はこれが美しいんですよ」と言っているだけです。犬よりも猫、こってり味よりあっさり味、ジャンクより健康食、イケメンよりマッタリ。そんな、なんとなく好ましい傾向があちらこちらから集まって、流行っているタレントの顔を借りて、空気のようにコンセンサスができあがっていく。しかしその美しさは、3年も持ちません 171P
時が過ぎれば、モテるとかモテないとかそんなこと、どうでもいいことになるんです。いえ逆に、何年か経っていい大人になってから「私って昔、モテモテだったの」って話してるおばさん、ダサくないですか?人の幸せというのは<人から求められていることを実感すること、それを自分で肯定できること>なんです 59P
美女になるためには、緊張感は不可欠なんです。何かに打ち込んだり、人に見られたり、評価されたり、絶望したり、気負ったり、歯を食いしばったり、泣いたり笑ったり。それを繰り返すうちに、顔が引き締まり、シャープな印象になっていく。目に力が宿って、目ヂカラがつく。口元が引き締まって、しかも表情が豊かになります。他人の目は彫刻刀のように、あなたの魅力を浮き彫りにしてくれるのです 132P

「その他大勢」と一緒じゃなくて、この先数十年大切にできる「自分だけの美しさ」のために何が必要なのか?そのヒントを見つけることができるはずです。

「好書好日」掲載記事から

>「これからの男の子たちへ」太田啓子さんインタビュー 男子にこそ正しい性教育が必要だ

>僕は頭がいいけれど…東大生が抱く「彼女は頭が悪いから」への違和感