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それでも、僕たちは結婚に夢を見る インタビュー集「岡村靖幸 結婚への道」書評

文:ウイ

36歳彼女なし。

あれ?もしかして、このまま一度も結婚せずに終わるタイプの人生?と考えるときがあります。そりゃ36年も生きていればこれまで何人かの女性とお付き合いさせていただいたことはあり、今考えれば若気の至りだったのかもしれませんが「結婚」というフレーズが見え隠れしていた時も過去にはありました。でも、僕はしなかった。考えられなかった。理由は山ほどありますが正直に言えば「今じゃない、お金がない、この人じゃない」の「3ない」に全て集約できると思っています。加えて、付き合っていた彼女たちから「結婚!結婚!」というプレッシャーを時にはあからさまに、時には無言の圧力として受けてきてしまい、なぜか僕の脳内で結婚とは「逃げ切るもの」というカテゴリーに分類されてしまったのです。そのくせ、たらればの話になりますが、元カノの顔を思い出すと(あの人と結婚できたら今とは違った人生だったのかな)なんて無責任な思考が頭をよぎることもあるわけです。タイミングというのは本当に重要ですね。

しかし世間とはよくできたもので、時代に合わせるように事実婚、契約結婚、週末婚など、様々な結婚の形が日本にも徐々に一般化しています。結婚しにくいと世の中と言われる中で、結婚のシステムが多様化しているわけです。僕も過去のブログや書籍で元カノから契約結婚を提案されて前向きに検討したことがあることを書きました。今でも選択肢の一つとしてありだと思っています。でも、あえてここで言いたいことがあります。ちょっと恥ずかしいのですが、できれば恋愛して、ドギマギしたりあたふたして、いわゆる普通の結婚がしたいんですよね。自分、36歳の独身のオッサンでありますが、あくまで第一希望は恋愛結婚なのです。

じゃあ恋人作って、育んで、プロポーズでゴールインですね、と。そんなに簡単にいかないのが30代の結婚。年齢を重ね、独身を謳歌すればするほど結婚のハードルは上がっていき、もはや気軽には飛べないほど高くなってしまいました。ハードルを押し上げているのは僕の生活や価値観などに他なりません。そのことを知っていながらも抜け出せない。まさに30代の独身は麻薬です。続ければ続けるほど抜け出せなくなる。でも、合法なので誰も止めてくれない。そのことを誰も教えてくれなかった。正確には樹木希林さんが「結婚なんか若いうちにしなきゃダメなの。物事の分別がついたらできないんだから」ということをおっしゃっていたのに、聞く耳がなかったわけです。今はまるでその頃のツケを払うような日々を送り、さらに心と身体は不自由になっていくのです。

そこで、もう少し視野を広げるために、自分なりの正解を見つけるために、様々な結婚の形を覗いてみようと思いました。その手助けになった本は歌手の岡村靖幸さんがインタビュアーとなり様々な人に結婚について根掘り葉掘り聞いた話をまとめた本「Will you marry me?」です。糸井重里さん、松田美由紀さん、YOUさん、藤井フミヤさん、吉本ばななさん等様々な方の結婚観を覗き見ることができます。

おもしろいことに同じことを言っている方がほとんどいないのです。そりゃ他人同士が一緒に生きるわけですから「これが正解!」というものが無いのは百も承知ですが、本当に十人十色なのです。

例えば、内田裕也さんと樹木希林さんの娘で19歳と言う若さで俳優の本木雅弘さんと結婚した内田也哉子さんはこう言っています。

結婚という枠に一度は入ってみる価値はあると思う。とにかく他人と生活を共にするのは至難の業。相手のすべてを見て、知って、共有して、それでもなお愛せるのかというのは、究極の修行なのかもしれない。しかも、その修行を積んだところで、優勝もなければゴールがあるわけでもない。子供をつくれば不自由なことも多くなる。結局、人間力を試すのが結婚なのかもしれないって思うんです(95~96ページ)

事実婚を推す坂本龍一教授はこう言っています。

オスとメスがペアとなり、子どもをつくり、ファミリーとして暮らす。それは、約20万年前、地球上にホモ・サピエンスが出現した頃から延々と続いている自然の営みなんです。それと、国家が「あなたたちは正式なペアです」と認める「制度」というのは、まったくの別物です。個人と個人の結びつきを、国家に認定してもらう必要はない、と僕は常々思っているわけです。(125ページ)

一方で「東京タラレバ娘」などの作家で知られる東村アキコ先生はこう言っています。

結婚って「条件が合うか合わないか」だと思うんです。結婚後もいまと同じペースで仕事ができるのか、食事はどっちが作るのか、掃除は?洗濯は?子どもの面倒は?結局、そこが合わないと一緒に暮らしてもうまくいかないんです。(267ページ)

失敗してもいいから絶対に一回は結婚するべきという方、事実婚でいいんだよという方、友達と結婚するのが一番だよと言う方、中には結婚なんかしないほうがいいという方もいます。本に登場する32人が、本当に別々のことを言っています。自分が思っている以上に結婚の形は多岐にわたり、だからこそゴールが見えない迷路なんだなと改めて実感してしまうのです。そりゃ世の中のアラサーやアラフォーがみんな迷子になっちゃうのも納得です。もちろん僕自身も自分の正解を見つけるために読んだはずなのに、本を読み進め、考えれば考えるほどより一層分からなくなるのです。もはや独身で、恋人もいない分際で理想の結婚を考えること自体が滑稽なのかもしれません。

でも僕は、世の中のアラサーアラフォーはもっと結婚に夢を見てもいいと思うのです。独身の30代の女性がTwitterに「年収1000万の男と結婚したい」と書き込めば叩かれる世の中です。多くの人には滑稽に映っているかもしれませんが、大志を抱いて何がいけないというのでしょうか。それだけではありません。独りで生きると決めた人も憐みの目で見る人がいます。個人の決意をとやかく言う権利も義務も僕たちには無いのです。

だから、僕は素直に結婚に夢を見ようと思います。多くの友人が離婚して、兄貴も離婚して、たくさんの人が「結婚なんかやめとけ」「結婚?しなくても大丈夫でしょ」「理想が高すぎるんだよ」と言う中、一人暮らしをこじらせ、独身をこじらせ、男をこじらせている僕はそれらの意見を聞こえないふりして「結婚?できないんじゃなくてしないだけ。でもいつかは幸せな結婚をしてみせるぜ」と声を大にして言おうと決意します。

芸人・森三中の大島さんと結婚した放送作家の鈴木おさむさんのように

妻が死んだら僕も死にます。妻がいなくなったら僕が生きている理由はもうないんです。もちろん、子どもがいれば別です。なんとか生きる方向を考えますし、子どもの存在は僕が生きる理由になります。でも、子どものいない現時点では、それが僕の答えなんです。(175ページ)

と言えるような愛する人と僕は結婚してみせます。まだ見ぬ妻が許すなら、鈴木おさむさんのように妻の名前のタトゥーを背中にでかく入れたいと思っています。

自分にとって理想の結婚は何か?その具体的な答えは本を読んでも僕の答えは見つからずにいたのですが、ひょんなことでその答えを見つけました。
先日、オードリーの春日さんが結婚されました(スキャンダルもありましたが)。そのプロポーズの言葉には多くの方が感動したのではないでしょうか。
以下はテレビ番組「モニタリング」で公開されたプロポーズの手紙の引用です

クミさん、今までたくさん手紙をもらってきたけど、今日、初めて手紙を書きます。
昨日、家にある数々の手紙を読み返してみました。春日の誕生日、バレンタイン、クリスマス、1ヵ月記念日、1年記念日、春日が入院した時、M-1の日。
そのどれもが春日に対する気持ちであふれ、体のことを心配してくれて、最後は必ず「また、来年も同じように祝いたい」で終わっていました。
すべての手紙に、2人の将来に対してのたくさんの期待が詰まっていました。しかし年々、手紙の数は減っていき、最後の手紙は5年前のものでした。手紙に変わって「結婚のことはどう考えているの?」というメールになりました。
不安にさせて、悲しくさせて、つらい思いをさせて、ごめんなさい。結婚している友達が多くいる集まりで話に入っていけず、台所で料理をさせるフリをさせてごめんなさい。

結婚で何かが変わってしまうのが、怖かったんです。クミさんのことよりも、自分のことしか考えてこなかったんです。
好きな人の一生を幸せにする覚悟が生まれるのに、10年もかかってしまいました。長い間、待たせてごめんね。
これからも携帯をいじって、ハイボールを飲んで、寝るだけかもしれないけど、焼肉は絶対に食べ放題かもしれないけど、誕生日プレゼントは中古かもしれないけど、ただ温泉に行く時、たまには特急に乗りましょうか。
この先の普通の日を、一緒に普通に過ごしたいです。
結婚してください。お願いします。

「この先の普通の日を、一緒に普通に過ごしたいです」

まるで、ゼクシィのコピーのような美しい文章。ここに春日さんの気持ちのすべてが詰まっているような気がします。そして、僕の正解もここなのかな、と思いました。僕は結婚を自分の人生が全て変わるようなものだと思っていました。「独身の自分」から「夫の自分」へガラリと変わらなければいけないような気がしていたのです。結婚に対して「なんだこのやろう?やんのか?」と身構えていたのです。別に変わらなくてもいい。無理せず、肩の力を抜いて、これから出会う人たちや、これまで出会った人たちを大切にして、一所懸命仕事をしていれば、この普通の毎日の延長に、普通の結婚があると信じていこうと思います。

少し話がそれましたが「Will you marry me?」は「結婚とはこうあるべき」と決めつけてしまっている人、「結婚?なにそれうまいの?」と迷子になっている方にヒントになってくれるはずです。