日本文化の本質を世界に伝えるには、どうすればいいか。フランス現代哲学の小林康夫氏と中国哲学の中島隆博氏が、エッセーを書き、対話したのが『日本を解き放つ』(東京大学出版会・3456円)だ。
取り上げたのは、日本語・中国語・サンスクリット語を通して〈ことば〉をつかんだ空海。能の〈からだ〉を生み出そうとした世阿弥。近代の衝撃を受け止めた〈こころ〉を描いた夏目漱石。そして、西欧とぶつかり、自らの音楽を作った武満徹らだ。
しかし今、世界と向きあう感覚が薄れ、脳はインターネットなどのバーチャルな世界に常時接続している、と小林氏。「接続を切るためには、なにが必要でしょうね」と中島氏がきくと、「自分のからだを使った表現が起こったときに、はじめて違う感覚が生まれるのでは」と答えている。
「読書は情報を得ることではありません。この本にも、はじめて知るようなことが数多くあるかもしれませんが、そんなものは捨ててください」という中島氏のことばに、勇気づけられる。(石田祐樹)=朝日新聞2019年3月9日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 「尾上右近 華麗なる花道」インタビュー カレーと歌舞伎、懐が深いところが似ている 中村さやか
-
- インタビュー 鈴木純さんの写真絵本「シロツメクサはともだち」 あなたにはどう見える?身近な植物、五感を使って目を向けてみて 加治佐志津
-
- コラム 三浦しをんさんエッセー集「しんがりで寝ています」 可笑しくも愛しい「日常」伝える 好書好日編集部
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 黒木あるじさん「春のたましい」インタビュー 祀られなくなった神は“ぐれる”かもしれない 朝宮運河
- インタビュー 「親ガチャの哲学」戸谷洋志さんインタビュー 生まれる環境は選べない。では、どう乗り越える? 篠原諄也
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社