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「大学による盗骨」 今も続く差別的収奪に向き合う

評者: 長谷川眞理子 / 朝⽇新聞掲載:2019年03月16日
大学による盗骨 研究利用され続ける琉球人・アイヌ遺骨 著者:松島 泰勝 出版社:耕文社 ジャンル:社会学

価格:1944円
ISBN: 9784863770522
発売⽇: 2019/02/04
サイズ: 19cm/322p

琉球、アイヌモシリ、台湾等で墓を暴き、骨と埋葬品を持ち去った人類学者たち。大学所蔵の人骨標本は、今日のDNA研究に至るまで多くの論文と研究資金の源となり…。日本の学知の根…

大学による盗骨 研究利用され続ける琉球人・アイヌ遺骨 [編著]松島泰勝、木村朗

 明治から昭和にかけて、本土の自然人類学者たちが、アイヌと琉球の人々の遺骨を無断で持ち出し、大学の博物館などに収蔵してきた。他人の墓から勝手に骨を持ち出すのは、戦前から犯罪である。だから、当時の市町村などの許可は得てはいるのだが、家族などに話をつけたわけではない。当事者から見れば、勝手に持っていったのだ。
 今やそんな時代ではない。が、遺骨返還の要望はずいぶん前からあるにもかかわらず、対応はまったく不十分だと、本書の著者たちは、心底怒っている。
 私は、東京大学理学部生物学科の中にあった、人類学教室の出身である。40年近く前、私が学生だったころ、アイヌの骨を所蔵していると「過激派」アイヌの人々から脅迫されるなどということが、冗談のように語られ、だれも真剣に向き合おうとしていなかった。
 今回、本書を手に取った理由は、このような過去の差別的収奪に関して、人類学者はどのように対応してきたのかを、自分の問題として考えたかったからだ。
 私自身は、日本人の起源の研究はしていない。それでも、自然人類学にたずさわっている以上、自分の分野が過去の遺産に対してどんな対応をしているのか知るべきだと思ったのだ。
 政府は、先月、アイヌ民族を日本の先住民族とし、その文化の継承を支援する法律を閣議決定した。しかし、琉球に関しては何の判断もない。日本は長い間、先住民族の問題を無視し、単一民族神話を作り上げてきた。それゆえ、先住民族に関する政治的対応も、遅れていると言わざるを得ない。そして、本書を読む限り、研究者とアイヌや琉球の人々との間に、信頼関係が十分に築かれてきたとは思えないのだ。
 本書は、先住民族の権利の問題に目を開かせてくれるとともに、互いに対等な関係で語り合い、人間としての信頼関係を築く、そういう地道な努力が必須であることを教えてくれる。
    ◇
 まつしま・やすかつ 1963年生まれ。龍谷大教授。琉球民族遺骨返還請求訴訟原告団長▽きむら・あきら 1954年生まれ。鹿児島大教員(平和学)。