――「絶世のブス」という強烈なキャッチのついた香澄役が決まった時の、率直な気持ちを聞かせてください。
私、自分のことをブスだとは思ってなかったんです。幼いころから父親に「お前はべっぴんさんだ」と言われて育ったので、芸人を目指して吉本に入ってから「お前ブスやな」って先輩たちから散々言われて、初めて「私って他人から見たらブスなんだ」と気づいたんです。
私は元々活字をあまり読まなかったんですが、この作品の原作を読んだ時は、思わず声に出して笑ってしまいました。お話の展開やセリフのテンポが良くて、早く次のページをめくりたくなったんです。香澄は見た目がブスだからと小さいころから結婚を諦めているんですが、私もこういう見た目ですし「結婚できるのかな?」って、同じように思っていたことがあるんです。芸人としてもトークで笑わせるのではなく、顔や見た目で笑いを取っているのでコンプレックスとは思っていないんですけどね。でも、私のこの見た目だからこそ、たくさんの人を笑顔にしたいなと思っているので、香澄がウェディングプランナーになって、いろんな人を幸せにしたいという気持ちが自分と似ているなと思い、とても共感できました。
――本格的な演技は今作が初めてとのことですが、初出演の映画で初めての主演を演じてみていかがでしたか?
撮影はすごく緊張しましたが、とても楽しかったです。私は小さい時からすごく人見知りで恥ずかしがり屋だったんですよ。人と喋りたくないから、ずっと髪の毛を食べて顔を隠したりして。根っこがそんな恥ずかしがり屋なのに人前で演技なんてできるかな?という不安はあったんですが、カメラが止まっている時でも、もこみちさんや大野さん、みなさんが私のセリフ合わせに付き合ってくれたんです。並木(道子)監督からは「月9のヒロインみたいに」と言われたので、特に誰をと言うわけではないんですが、意識して演じたら「最後の方は有村架純ちゃんに見えたよ」って言ってもらえました。本当にこの作品では人に恵まれましたね。
――久世課長からのバックハグや壁ドン、武内さんとほのぼの中華料理屋さんデートなど、二人の男性からアプローチを受けるという役どころでしたが、よしこさんが一番ときめいたのはどのシーンですか?
意外かもしれないですけど、私、男の人と付き合ったことがないんですよ。なので、初めて男性に、しかも速水もこみちさんに後ろから抱きしめられたことが一番緊張したし、印象に残っています。もこみちさんは背が高いので、バックハグするとちょうど私の首に腕が回ってプロレスの絞め技をかけられているみたいになるんです。「バックハグされるのってこんな苦しいものなんだ」と思いました。
あとは、私が久世さんに抱きつく瞬間にイルミネーションが点灯するシーンがあるんですけど、電灯をつける人とタイミングを合わせるのが大変で、OKが出るまで10テイクくらいやったんです。その時は心の中で「機材トラブル起きないかな?」って願ったほど幸せな時間でした。久世さんにギュって抱きついたとき「ドク、ドク」という鼓動が聞こえたんです。私はその時めちゃくちゃ心臓がバクバクしていたのに、もこみちさんはまったくの平常心でしたけど(笑)。
――原作では久世課長が香澄の容姿について容赦なく罵声を浴びせるじゃないですか。これが映画化になった時、どんな感じなのかな?とちょっと心配していたんですが、速水さんが演じる久世さんからは温かみが感じられました。
そうなんです! まったく嫌味じゃないんですよ。本当に香澄を愛してくださっているのが伝わってくるというか。私も原作を読んだ時は「ここまで言われるんだ」って思っていたんですけど、撮影が始まったら、段々と久世さんから言われる「ブス」が、「愛してる」と言われているような感覚になってきたんです。「この人にとっては私が可愛いからブスって言っているんだな」と、ブスと言われるのが愛おしく感じましたね。
――よしこさんは昨年、病が見つかり手術を受けて一時休業されていましたが、本作の撮影中、体調はいかがでしたか?
この映画の撮影中はまだ発病しているとは分からなかった時でした。症状も自分では気づかなくて、ある芸人の先輩に「お前鼻が大きくなったな」と言われた時は「ブスブス言われているから顔がそっちに寄ってきているのかな」と思っていたくらいで。そんな時、たまたまマネージャーから人間ドックを勧められて、病気が見つかったんです。でも私は病気になったことをプラスに捉えているんです。病気になるのはイヤだけど、人とは違う体験ができたし、何かを乗り越えたという経験は自信にもなって、今生きていることがありがたいと思えるようになりました。
――「女性は、愛されるためだけじゃなく、愛するためにも綺麗になる必要があるんです」「自分に自信を持てなかったら、他人を好きになる勇気も持てない」という香澄のセリフにハッとさせられました。自分に自信をつけるにはどうしたらいいと思いますか?
実は私も模索中なんです。でも香澄役を演じてより強く思ったのが「心で生きる」ということです。自分の心に正直でいたら自然と自分に嘘もつかなくなるし、そんな嘘をつかない自分を好きになれるじゃないですか。ありのままの自分でいて、それが周りに受け入れられたら「このままの私でいいんだ」ってすごく自信になりますよね。なので、私はもがきながらも、自分の心に正直に生きようと思っています。