日々の暮らしの中の、きらっと光る瞬間を閉じ込める。それがエッセーの魅力だと著者は言います。
年齢を重ねるごとに、「時」はスピードを上げて駆け抜けていきます。ともすれば見失いがちな「今」の中にある小さな喜びのタネを、大切に育てるように書き綴(つづ)った66編のエッセーが本書に収められています。平明な言葉で記されているのは、季節の移り変わりに思うこと、大人になってから始めた演劇、夫や子どもたちと重ねた年月、自らの子ども時代など。肩の力の抜けた前向きな言葉のシャワーを浴びているようです。
「あ、私にもそんなことあったね」と、共感しながら読み進められるでしょう。心が温もり、ていねいな暮らしに向かいたくなる読後感です。
定価1200円+税 文芸社 03・5369・2299