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杏さん、ドラマ「偽装不倫」で主演 実はアラサー女性のもどかしいラブストーリー

文:永井美帆、写真:有村蓮

 7月の初め、ドラマ撮影の合間を縫ってインタビューの現場に現れた杏さんは、黒い髪をキッチリと束ね、漫画の中の鐘子そのものだった。4年ぶりとなる連続ドラマ主演が決まり、原作漫画を何度も繰り返し読んだと話す。

 「原作がある作品に出演する時は、毎回ビジュアル面は大切にしたいと思っています。原作に描かれている登場人物にどれくらい寄せていけるか。今回も鐘子を演じるにあたって、メイクさんや衣装さんといろいろと話しました。原作の中で、<髪が顔にかかるとかゆくなる>って書かれていたので髪はまとめて。ずっと斜め前髪がキープされていたので、斜めに流した時にきれいに見えるようにカットしました」。ほかにも、冷え性という設定なので、短い丈のスカートは着ない、家の中でも靴下を履くなど、ドラマの中には原作からヒントを得たアイデアがいくつもとりいれられている。

 原作では鐘子が韓国旅行に向かう機中で韓国人カメラマンと出会うという設定だったが、ドラマでは福岡旅行になり、相手役もスペインでカメラマンをしている日本人男性にアレンジされている。「舞台は韓国と博多で違うんですけど、カット割りなどの描き方は割と忠実に再現されています。例えば『不倫しませんか?』と言われた時にサッと風が吹く演出とかは漫画と一緒だし、原作とドラマを見比べながら見ても面白いかもしれません。私自身、不倫ものにはなかなか共感できないところがあるんですが、この作品はフタを開けてみると不倫ではなく、アラサー女性のもどかしいラブストーリーで、見ている方もつい鐘子を応援したくなると思います」

 もともと東村アキコさんの作品が好きで、『ママはテンパリスト』や『かくかくしかじか』、『雪花の虎』など、ほとんどの作品を読んでいたという。「コメディーもあれば、大人の恋愛みたいな作品もあって、どれも『この先どうなるんだろう?』って展開が読めないんですよね。東村さんならではの視点も面白いし、心に刺さる言葉も多いです。以前、東村さんの原画展で展示されていた『東京タラレバ娘』の中のせりふが心に残っています」

「あんたらの歳だとチャンスがピンチなんだよ」
「ピンチがチャンスなのは若いうちだけ」
「新人じゃないんだから結果出せて当たり前」
(「東京タラレバ娘」第3巻より)

 「アラサーの売れない脚本家が、年下の男性から言われたせりふなんですけど、東村さんの作品は自分が気付かなかった新しい視点を教えてくれる気がします。実写化されるというニュースを聞く度に『私もいつか演じたいな』と思ってきたので、今回主演させて頂けることになって、すごくうれしいです。今でも原作の『偽装不倫』が更新される土曜日はソワソワしながら楽しみに待っています」

 ドラマでは“おひとり様女子”を演じているが、プライベートでは3児を育てるママでもある杏さん。4年ぶりのドラマの現場について尋ねると、「基本的に起きる時間、寝る時間はそんなに変わらないし、家に帰って、子どもたちにご飯を食べさせて、寝かせてっていうリズムも同じですね。もちろんせりふを覚えるとか、やるべきことは増えているんですが、ベースの部分はそんなに変わらないかなって思っています」。

 漫画だけでなく、小説、ノンフィクション、エッセーなど様々な作品を読み、読書家として知られる。今年3月で終了したラジオ番組「BOOK BAR」では11年にわたり、旅人の大倉眞一郎さんとともに毎週1冊ずつ、これまでに1000作以上の本を紹介してきた。

 「番組をやっている間は休みなく、週1冊は読んでいました。好きな作家さんを1人あげるのは難しいけど、宇江佐真理さんはどれも心が温かくなるような作風で好きです。『雷桜』という作品で出会って、それからずっと読んでいます。読書の時間はすごくプライベートな自分だけの時間。ただ、ドラマや映画の撮影が始まると自分が物語の中の人物になるので、それ以外のストーリーがあまり頭に入ってこなくなるんです。脳が必要としないというか。そういう時はノンフィクションとかエッセーを読むことが多いです」

 さらに、漫画を読むことも気分転換になるという。「今は少年漫画の『からくりサーカス』を予約注文して読んでいます。ずっと前に連載が終了した作品なんですけど、全編カラーの完全版が出たんです。ちょうどこのドラマの撮影期間と同じ8月末まで月2冊ずつ届くので、いい息抜きになっています」

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