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怒りや憎しみにまみれても繋ぎ止める力 一木けい「愛を知らない」

著・一木けい

 「愛」はポジティブな言葉なのでしょうか。本当は、相手を大切に思いながらも、憎悪や支配と分かち難く絡み合った混乱を指すのかもしれません。

 高校2年生の橙子はクラスで浮いています。約束は守れないし、協調性はゼロ。なのに同級生の推薦で、合唱祭でソロを歌うことになります。最初は嫌々、次第に仲間たちに心を開いて音楽にのめり込んでいく彼女には、特殊な事情がありました。橙子がひた隠しにしていた秘密は、ある事件によって明かされます。

 オセロゲームのように白黒が反転する状況の下、橙子やその家族、周囲の人が取る行動が息をもつかせません。嘘や怒りの嵐が過ぎ去った後に残る一筋の光が、いつまでも心に残るでしょう。

定価1500円+税 ポプラ社 03・5877・8101