著者は蒸気機関車が吐き出す「けむり」に惹かれ、現役で走る様子を撮り続けました。撮影期間はSLが姿を消しつつあった昭和40年代。東北本線を走っていた大迫力のD51三重連や、昭和45年まで呉線に奇跡のように残っていた大型のC59やC62など、鉄道ファンが小躍りしそうな写真が多数収められています。
輸送の主役が鉄道だった時代、延々と続く貨車の列や優美なブルートレインは、人々の夢も乗せて走っていたのでしょう。また、北海道の原野にCの字を描く大カーブや、紅葉真っ盛りの渓谷など、風景の美しさも本書の魅力です。
沿線には茅葺(かやぶき)の家が建ち並び、海岸はテトラポットのない砂浜。写真には、古き良き日本が焼き付けられています。
定価4500円+税 講談社エディトリアル 03・5319・2171