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山沢栄子「私の現代」 信念貫いた写真界のレジェンド

回顧展は、11月から東京都写真美術館に巡回

 こんな素敵な人が、大阪に、日本にいた。知らなかった。27歳で単身渡米、助手を務めながら写真家としての腕を磨いた。帰国後、写真スタジオを開きバリバリ働く。男社会と戦う、強い目でファインダーを覗(のぞ)いた。戦中は疎開先で生きる人々の姿を優しい目線で写した。戦後、再び渡米。現代写真の最先端に触れ、充実した作品群を自らも残す。写真界のレジェンドでありながら80歳を超えても現役で活躍した。晩年の、カラーを含む抽象写真の驚くべき新しさとユーモア。
 生誕120年を記念した回顧展に合わせ、代表的な作品群やその魅力に迫る本書。最新の調査成果や歴史上の位置付けなど学芸員の文章もコンパクトで読みやすい。読めば誰もが元気になる彼女のエッセイも3本再録。「事々にくだらないカンショウを受ける現代の女性の一人として私はどこまでも真面目に自分の信ずる道を行きたいと思ふ」と書くのは1934年の山沢栄子。もっと見たい。読みたい!=朝日新聞2019年8月3日掲載