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田辺聖子さん「お別れの会」 執筆に「どれほどの心労があったか、わからなかった」

 6月に91歳で亡くなった作家、田辺聖子さんのお別れの会が9月25日、都内であった。背中を追いかけてきた女性作家らが、チャーミングな人柄をしのんだ。
 江國香織さんはデビュー間もない頃の対談で、「小説を書き始めるときには、二つお土産を持って行きなさい」とアドバイスされたという。「一つのアイデアだけではだめで、もう一つ書きたいことやディテールを、と。表現が本当にすてきだと思った。とてもたくさんの小説、エッセーをまさにお土産みたいに残してくださった」と話した。
 林真理子さんは「一流の文学者であり、一流の生活者でもいらっしゃいました。ご主人を愛し、食べることや飲むことが大好きで、楽しく優雅に暮らしていた」と振り返った。
 親族代表としてあいさつしためいの田辺美奈さんは、創作の裏側を明かした。亡くなった後に見つけた日記には「今日も書けなかった。話浮かばず」「ようやく原稿を渡す。この締め切りを乗り越えられたのは神仏のおかげ」などとつづられていた。「原稿用紙のマス目を一字一字埋めながら人の心を動かす言葉を紡ぎ出す仕事の裏に、どれほどの心労があったか、親族でもなかなかわかることではなかった」(興野優平)=朝日新聞2019年10月2日掲載