2019年6月、米フェイスブックが発表した仮想通貨「リブラ」構想は世界の金融関係者に大きな衝撃を与えた。本書はその功罪両面を探る。
世界で銀行口座がない人は途上国を中心に17億人いるが、そのうちの10億人が携帯電話を持つ。こうした人たちがリブラを介して金融インフラにアクセスできる等の利点がある一方、政府・中央銀行は国が独占的地位を占めてきた通貨発行権を侵されかねない等と懸念する。
リブラは二重譲渡など不正対策として、ビットコイン同様「ブロックチェーン」を使う。また価値がドル、ユーロ、円などと連動する「通貨バスケット」制を採用し「安定通貨」を目指す。
その発行・運営主体「リブラ協会」には当初、米ライドシェア大手のウーバーなど28の企業・団体が名を連ねたが、金融当局などの批判を受け脱退した企業も少なくない。巨大IT企業が圧倒的な顧客基盤をテコに、金融分野で素早く支配的な地位を固め、寡占につながる等の恐れもある。
「リブラが計画通りに誕生するとは思わない」と疑う識者もいるが、第2、第3のリブラ的な動きは続き、金融のデジタル化は止まらないと本書は見る。=朝日新聞2020年2月1日掲載