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「2050年 世界人口大減少」書評 女性の地位向上で不可避な未来

評者: 長谷川眞理子 / 朝⽇新聞掲載:2020年03月28日
2050年世界人口大減少 著者:ダリル・ブリッカー 出版社:文藝春秋 ジャンル:経済

ISBN: 9784163911380
発売⽇: 2020/02/24
サイズ: 19cm/381p

2050年 世界人口大現象 [著]ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン

 世界の人口は、現在およそ76億人。国連の推計では、今世紀いっぱい増え続けて110億人ほどになり、2100年代になって初めて横ばいになるという。著者らはそれを真っ向から否定する。今の人口動態を見てみると、2050年ごろには世界人口は減り始め、そのときの人口はせいぜい90億人ぐらいではないか、と言うのだ。
 これまで各国、地域、諸文化のさまざまな集団において、何が起こってきたかを見てみよう。都市化が起こり、女子教育が普及し、女性の地位が向上すると、必ずや1人の女性が産む子どもの数は減った。今や世界中がその傾向にあるので、チリでも、タイでも、ナイジェリアでも出生率は低下している。
 なぜそうなるのか? 都市生活では、第1次産業が主ではないので、子どもがいても家庭の労働力の足しにはならない。それどころか、子どもは金がかかって負債となる。女性の地位が上がれば、女性が自分を向上させることに資源をつぎ込み、男性の言いなりにはならない人生を送ろうとする。そうなると、確実に子どもの数は減るのだ。
 本書は、さまざまなデータから理論的予測を導いているが、それだけではない。本書のすごいところは、ケニアやブラジルのスラムに住んでいる女性たち、いまだに男尊女卑の激しいインドの女性たち、そして、ヨーロッパなど先進国のカップルなどにインタビューを行っていることだ。この先、彼女らはどのような人生を選択するか? それを考えれば、遅かれ早かれ人口は確実に減る。そこで移民の受け入れが最重要になるのだが、移民の供給側でも人口は減る。
 女性の地位が向上するのは望ましい。人口が減れば地球環境への悪影響は抑えられる。でも、子どもがいないのは寂しい。人類という生物が今後どのような存在になるのか、中長期的に大変に重い課題となることを考えさせられる。
    ◇
 Darrell Bricker 調査会社のグローバルCEO▽John Ibbitson カナダの新聞記者(政治、国際関係)。