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TVOD「ポスト・サブカル焼け跡派」インタビュー 音楽と社会、対話で縦横に

コメカさん(左)とパンスさん=東京都国分寺市、大野洋介撮影

 「TVOD」は、コメカさん(左)とパンスさん(右)の批評ユニット。2人は大学時代の友人で、卒業後、書店員と出版社の営業として再会した。本書は15組のアーティストについての対話から1970年代以降のポップ音楽と社会の変遷をたどる。

 84年生まれで「20世紀に間に合ってしまった」2人。バブル景気と幼少期が重なり、少年期は阪神大震災や地下鉄サリン事件、青年期に米国同時多発テロとイラク戦争があった。コメカさんは「日本社会では、外部を意識せずサブカルを消費していた」と振り返る。しかし、その間に日本は没落して「焼け跡化」した。「昔がよかったとは思わない。でも、自分たちが育ってきた文化を武器に考えていくしかない」

 パンスさんはアニメの「ガンダム」を例に「サブカルチャーは60歳前後までの人にはもはや基礎教養に近い。そこを調べることが今の日本の精神性の分析につながる」。だからサブカルチャーと政治を同時に語る。

 選んだ15組は、「時代の中でキャラクターが作り上げられ、その人が時代を変え、また時代にその人が変えられていった人」(パンス)だ。1人目は矢沢永吉。ビートたけしからバンドJAGATARAの江戸アケミまで幅広い。椎名林檎は2人とも好きで聞いてきたが、「軽薄な『日本志向』」と手厳しい。「作られたキャラクターについては検証しないと。彼女をすごいとしか言わない状況はまずい」とコメカさんは言う。

 取材は、コメカさんが1年ほど前、東京・国分寺に開いた早春書店で。2人がしばしば語り合う場所の一つでもあるらしい。膨大な会話をもとに、この本が出来ている。「コミュニケーションを誘発したい。会話の形式なら色んな人が入ってこられるから」というコメカさんの言葉に、パンスさんが頷(うなず)いた。(文・滝沢文那、写真・大野洋介)=朝日新聞2020年3月28日掲載