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「ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険」書評 ことばの職人たちの裏話

評者: 生井英考 / 朝⽇新聞掲載:2020年06月20日
ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 著者:コーリー・スタンパー 出版社:左右社 ジャンル:言語・語学・辞典

ISBN: 9784865282566
発売⽇: 2020/04/01
サイズ: 20cm/355p

“bitch”は侮蔑語か? アメリカで最も歴史ある辞書出版社、メリアム・ウェブスターの編集者が言葉の謎をとく。一語一語と向き合い、格闘する、知られざる辞書編纂の世界とその…

ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 [著]コーリー・スタンパー

 アメリカで「聖書の次に売れているかも」という『メリアム・ウェブスター・カレッジ英語辞典』。その元編集者で、版元のホームページ動画で人気者になったのが本書の著者である。
 編集者といっても、辞書の語釈を書くのは専門職の「レクシコグラファー」(語釈編纂者)。つまり学者以上に学識も教養もあるが、あくまで陰の仕事に徹する知の職人だ。
 それゆえ本書も「教養あふれる裏話」が楽しい。その実例は本書を手にしてもらうとして、著者は言葉を「守るべき砦(とりで)」というより、親の思い通りにならない「子ども」だという。
 辞書という規範的な出版物づくりに格闘した人ならではの見方。なるほどと思った人は、きっと本書のよい読者だろう。
 抱腹絶倒の失敗談に、白人男性支配の世を射抜く絶妙のユーモア。猥(わい)語の「ビッチ」をめぐる章の結びには、いやはや舌を巻きました。女性ばかり6人の訳者陣の仕事にも拍手。