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「学校の社会学」書評 フランスの教育、「不平等」軸に紹介

評者: 本田由紀 / 朝⽇新聞掲載:2020年07月04日
学校の社会学 フランスの教育制度と社会的不平等 著者:園山大祐 出版社:明石書店 ジャンル:教育・学習参考書

ISBN: 9784750350141
発売⽇: 2020/05/07
サイズ: 20cm/225p

学校の社会学 フランスの教育制度と社会的不平等 [著]M・ブランシャール、J・カユエット=ランブリエール

 フランスの教育社会学といえば、ブルデューやブードンの研究が著名である。しかしそれ以外は英語圏の研究が参照されがちな中で、本書は近年のフランスの教育の動向と多様な研究成果を、「不平等」を軸に包括的に紹介している。
 バカロレア(大学入学資格試験)の取得率は増加したが、家庭背景や性別などによる進路選択の偏りは残る。複雑に分岐した教育制度と、減少したとは言え留年の仕組みをもつフランスでは、不平等を把握するために多様な指標を用いる必要があり、そこが研究者の腕の見せ所となる。
 進学率が上昇しても相対的不利が続くことを表す「引き延ばされた排除」など、普遍的有効性をもつ諸概念が目を引く。
 訳は硬めで、他の言葉を充てた方がよいのではと思われる箇所もあるが、「教育格差」が話題となっている日本の現状と照らし合わせて読むことで、現代における教育の隘路(あいろ)への理解が深められるだろう。