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夏休み、想像広げる旅へ 「子どもの本棚」オススメ本8冊

「グラフィック版 アンネの日記」

 死の恐怖におびえながら、隠れ家で多感な思春期を過ごしたアンネ。13歳の少女がつづったあまりにも有名な日記をイラストを交えて編集。アンネの魅力的な人物像がくっきりと描かれ、より身近に感じられます。コロナ禍で日常とはかけ離れた生活を送っている今だからこそ、アンネの心に深く寄り添える気がします。(A・フランク著、A・フォルマン編、D・ポロンスキー絵、深町眞理子訳、2000円、あすなろ書房、小学校高学年から)

「好奇心の部屋 デロール」

 ショーウィンドーにはライオン。そっと中に入ってみると少し違和感を覚える不思議な光景。ところ狭しと並ぶ動物や昆虫。普段近くで見ることのできない大きなシロクマも! ここ「デロール」はフランスにある剥製(はくせい)を売るお店なのです。こちらを見つめるガラスの目。一歩ずつきしむ階段を踏みしめながら本当に店内を見て回る錯覚におちいります。(今森光彦文・写真、1300円、福音館書店、小学校中学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

「つかまえた」

 「ぼく」はひとり川へ行き、浅瀬にじっとしている1匹の魚を見つける。滑って落ちた水中で、指が魚に触れる。逃がすもんか。「ぬるぬる」「ぐりぐり」つかむ手の中で暴れる命。強く激しく切なくいとしくユーモラスな生命の交感。荒々しいタッチ、かすれや余白にも、水や空気や感情がほとばしる。今年80歳を迎えた作者の原体験が鮮やかに伝わる絵本だ。体に生命力を呼び覚ましたい、この夏にぜひ(田島征三作、1400円、偕成社、5歳から)

「なっちゃんのなつ」

 友達が留守で、ひとり河原へ出かけたなっちゃん。くすくす笑いながら触ってくるクズのつる、悲しそうにうなだれるヒマワリ……植物や鳥や虫たちと、なっちゃんはなかよし。甘いサルビア、かゆい蚊、冷たく激しい夕立。五感全開で感じる画面にセミが静かに死んでいたり、墓石にアリが歩いていたり。この日はお盆。生と死の交差する日本の夏が、ここにあります=(伊藤比呂美文、片山健絵、900円、福音館書店、4歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「無限の中心で」

 高校2年生の野崎とわは、小学校の同級生だった美織に頼まれて新聞部の助っ人をすることに。早速、数学オリンピックの取材をするために数学研究部の教室を訪れますが、個性派ぞろいの3人の部員の発言や行動を理解できません。数学が苦手なとわに記事が書けるのでしょうか!? 文系女子と数学男子がくり広げる青春ストーリーですが、同時に数学の奥深さも少し味わうことができうれしくなります(まはら三桃著、1400円、講談社、中学生から)

「やかまし村の子どもたち」

 夏休み、することがなくてたいくつだと思ったら、この本を読んで、やかまし村の子どもたちと一緒に遊んでみませんか。6人の子どもたちは遊びを思いつく天才で、かくれ小屋をつくったり、ひみつの手紙をやりとりしたりと毎日を楽しく過ごしています。遊びに夢中の子どもたちはキラキラと輝いていて最高です!(A・リンドグレーン作、I・V・ニイマン絵、石井登志子訳、1650円、岩波書店、小学校中学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「わたしたちのカメムシずかん」

 カメムシは触ると臭い、だから嫌いという人も多い。この嫌われ者の虫に夢中になり、もっと知りたくなり、自分たちでカメムシ図鑑まで作り、やがてカメムシは宝だと言うようになった子どもたちがいる。どうしてそんなことになったのかを楽しく描いたのが、このノンフィクション絵本。カメムシはどうして臭いのか、どうして集まるのかについても、わかるよ(鈴木海花文、はたこうしろう絵、1300円、福音館書店、小学校中学年から)

「ぼくはアフリカにすむキリンといいます」

 コロナのせいで友だちと会えない人は、手紙を書くのもいいね。この本では、アフリカの草原にすむキリンと、遠くの岬にすむペンギンが、ペリカンとアザラシに配達してもらって、ゆかいな手紙をやりとりする。手紙だからこそ、返事を待つ間にどんどん想像がふくらんでいく。キリンがペンギンの姿をまねする場面は、おかしくて笑っちゃうよ=(岩佐めぐみ作、高畠純絵、1000円、偕成社、小学校中学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】=朝日新聞2020年7月25日掲載