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「ドキュメント武漢」など注目の新書5選(朝日新聞2020年9月5日掲載)

『死の病いと生の哲学』

 「歳をとらなければ老いを理解することはできない」。60代後半でがんになり、「初めて老化を自覚させられた」哲学者は何を考えたか。生命とは、死とは何か。がん療養を旅しているという著者が、ニーチェやフーコー、鴨長明らの言を自在に引きながらつづった「旅日記のような」一冊。
★船木亨著 ちくま新書・1034円

『ドキュメント武漢』

 新型コロナウイルスの世界的流行が始まった中国・武漢を都市封鎖の6日前に取材した共同通信社中国総局記者による7カ月間の緊急報告。直接取材が難しいなかネット情報も拾いながら実態に迫る。医療従事者への暴力、食料不足、政府の情報操作など一歩間違えば人ごとではない。
★早川真著 平凡社新書・902円

『文学こそ最高の教養である』

 光文社古典新訳文庫シリーズを立ち上げた駒井が、翻訳者14人に古典の魅力をきいた書店イベントを書籍化。中条省平はロブ=グリエ『消しゴム』、高遠弘美はプルースト『失われた時を求めて』を語る。熱のこもった対談で脱線話も面白い。
★駒井稔+「光文社古典新訳文庫」編集部編著 光文社新書・1540円

『東京裏返し』

 上野・浅草・本郷・谷中・王子など、都心北部を社会学者が歩くガイド。東京は徳川家康、明治政府、米軍によって3回「占領」された。1964年の五輪に向けて高速道路で川は覆われ、路面電車も消えていく。顧みられなくなった川や街、敗者の記憶に注目し、東京を「裏返し」ていこうと説く。
★吉見俊哉著 集英社新書・1078円

『世紀の落球』

 日本代表として挑んだ五輪の舞台や高校野球注目の一戦でフライを捕り損ねた選手たち。その後チームも敗北したことで「戦犯」とバッシングを受けた3人のその後の人生を追ったノンフィクション。一つのプレーで人生を狂わされた選手たちは、失意からいかに立ち直ったか。
★澤宮優著 中公新書ラクレ・880円=朝日新聞2020年9月5日掲載