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「さよなら、俺たち」書評 ホモソーシャルな複数形から個人へ

評者: いとうせいこう / 朝⽇新聞掲載:2020年09月19日
さよなら、俺たち 著者:清田 隆之 出版社:スタンド・ブックス ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784909048080
発売⽇: 2020/07/02
サイズ: 19cm/301p

失恋、恋バナ収集の現場で見聞きしたエピソード、友人知人との語らい、ニュースや社会問題、コロナ離婚…。様々なテーマに根づく男性問題を掘り下げる、本格的ジェンダー・エッセイ集…

さよなら、俺たち [著]清田隆之(桃山商事)

 桃山商事の清田代表といえば、主に女性たちの恋愛話を聞き取りながらそれを整理し、ジェンダー問題などを的確にとらえて話しあうといった活動で有名だ。私も何度かラジオで声を聞いたことがある。
 その清田代表が様々な媒体に書いたエッセーをまとめたのが今回の『さよなら、俺たち』で、このタイトルにメッセージの大半は汲み取られている。
 「僕たち」「俺たち」、と男性は同一性をもって集団化しやすく、ゆえに自分がジェンダーにとらわれていることに気づきにくい。だから無意識に他の性を抑圧してしまう。
 そのホモソーシャルな複数形から、「個人への脱皮を目指すためのプロセス」が本書であり、他人の話を聞く姿勢を根本とする著者は上からの断定や、独りよがりの結論を柔らかく避ける。というか、自らの中にも常に「男性性」が生じることを意識し続ける。
 したがって「さよなら」も日々言われ続けるのだ。