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末近浩太「中東政治入門」など注目の新書5選(朝日新聞2020年9月19日掲載)

『中東政治入門』

 とかく複雑で敬遠されがちな中東の政治について、この地域の研究を専門とする立命館大教授が、「ソフトすぎる概説書」と「ハードすぎる専門書」を橋渡しすべく著した一冊。国家、独裁、紛争、石油、宗教の各項にわたり、中東の固有性と他地域との共通性に留意しつつ懇切な解説を施す。
★末近浩太著 ちくま新書・1100円

『政治部不信』

 プロンプターを見ながら一方的に原稿を読み上げる安倍晋三前首相の記者会見、安倍前首相と政治記者のオフレコの会食。なれあいにも映る政治取材を批判する声がSNS上にあふれている。朝日新聞政治部記者で、新聞労連中央執行委員長を務めた著者が「日本メディアの構造的な問題」に切り込む。
★南彰著 朝日新書・869円

『「文」とは何か』

 文法を学ぶことは退屈? そんなことはないと著者は言う。例えば、道で犬を見かけて「ビーグル!」と独白した場合も、「あれはビーグル」のように指示詞が隠れていると考えられ、立派に「文」としてカウントできる。言語学を研究する著者が軽妙な筆致で文法の世界を案内する。
★橋本陽介著 光文社新書・924円

『苦しい時は電話して』

 作家で建築家の筆者は2012年から「いのっちの電話」として携帯電話の番号を公開し、「死にたい人であれば誰でも」話し相手になってきた。双極性障害である自身の経験を踏まえ、気分が落ち込んだ時の具体的対処法や過去のやりとりを紹介。自殺者ゼロを目指す実践の記録。
★坂口恭平著 講談社現代新書・880円

『番号は謎』

 電話番号、マイナンバー、原子番号、テレビチャンネルなど、私たちの生活は番号であふれている。最小限に圧縮された無味乾燥な情報は、効率的に管理するために利用されるが、永久欠番のようにステータスを生じるときもある。なぜその番号がつけられたのか、秘められたドラマを探る。
★佐藤健太郎著 新潮新書・858円=朝日新聞2020年9月19日掲載