師匠の古谷三敏ゆずりの絵柄は一見ほのぼのファミリーマンガ。しかし、中身は『闇金ウシジマくん』にも劣らぬダークな転落人生劇場だ。
主人公は平凡な高校教師。ところがある日、パチンコによる借金を残して妻が出奔。わずかな情報を頼りに息子を連れて行方を追うが、金がなくなりパチンコに手を出す。最初は抵抗を感じながら、みるみるうちにハマっていくさまはギャンブルの怖さを痛感させる。が、それだけならばよくある話。本作が本当に恐ろしいのはその先だった。
この男、パチンコの軍資金を稼ぐためなら手段を選ばない。子供をダシにした脅迫まがいの行為をはじめ鬼畜のような所業を連発し、周りの人間をも泥沼に引きずり込みながら、無邪気に笑う姿はサイコホラーの域に達する。
1話ごとに急転するストーリーはまさに弾かれたパチンコ玉のようで、結局は奈落に沈む。パチンコ好きには身につまされる話だろう。初出は90年代のパチンコ雑誌。電子版で公開されていたものが突如ネットで話題となり単行本化された。自身もパチンコ依存の経験があるという作者ならではの容赦ない描写は、ギャンブル依存症の啓発書としても効果がありそうだ。=朝日新聞2020年10月17日掲載