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都築響一「IDOL STYLE」 互いに見つめるアイドルとファン

『IDOL STYLE』の表紙

 アイドルと、そのファン。それぞれの自室で、こちらを見つめる写真が見開きで並ぶ。ページをめくると「なぜアイドルになったか」「なぜファンになったのか」が同じく見開きの、談話形式で綴(つづ)られる(ほぼ同じ分量で)。彼女ら、彼らの語りは、はかない夢と、なけなしの希望に満ちている。100名以上、その姿と言葉を拾ったのが本書だ。今、記録しなければ、それらの言葉は消えてしまうかもしれない。そんなことは絶対にさせない。彼女ら、彼らの姿を記録する著者の目線は、徹底して肯定する強い力を帯びている。

 都築響一は、これまで世界のあちこちを旅してきた。それはすぐ近くのアパートの室内のこともあれば、遠くアメリカの田舎だったりした。彼の本はどんな場所であっても、空間を一気に飛び越えて、読者と世界をいつも強く結びつけた。親密な気持ちが生まれる場所。それが彼の本の特徴である。本書も、写っているのは他人ばかりなのに、自分もなぜか混じっている、そんな気がするはずだ。=朝日新聞2021年2月6日掲載