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山岸涼子「レベレーション」が完結 説得力ある線、ジャンヌの行動と一体化

レベレーション 6巻

 山岸凉子が6年間連載した『レベレーション(啓示)』が完結しました。最終巻の刊行が昨年末ぎりぎりだったため、2020年のマンガランキングには入りませんでしたが、もう少し早く刊行されていれば、ベストワンの候補になっていたでしょう。少なくとも私にとっては最高の作品です。

 題材は、15世紀のフランスに出現した救国の英雄、ジャンヌ・ダルクの生涯です。イギリスとの百年戦争のさなかに生まれ、13歳で初めて神の声を聞き、その後、神からフランス王を救えとの啓示を受け、王の軍を率いてイギリスに包囲されていたオルレアンを解放し、当時の王太子シャルル7世をランスで戴冠(たいかん)させ、正式のフランス王にさせます。しかし、コンピエーニュの戦いで敵側に捕らえられ、イギリスに売りわたされ、宗教裁判の結果、魔女としてルーアンの広場で火刑に処せられます。享年19でした。

 山岸凉子は、このフランスで一番有名な女性の生涯を可能なかぎり史実に忠実にマンガ化しています。しかも、百年戦争の時代の複雑きわまるフランスとイギリスの政治的駆け引きを見事に分かりやすくまとめ、ジャンヌの活躍を歴史的背景の上にくっきりと浮き彫りにしています。しかし、それだけならば、これまでも多くのすぐれた歴史マンガがおこなってきたことです。

 山岸版『レベレーション』の途方もないすごさは、神の声を聞いた少女の超自然的体験を、作者自身が文字どおり神がかりで描きだすエネルギーの濃密さにあります。山岸凉子のタッチはふるえるように繊細で、鋭く尖(とが)りすぎていまにも折れそうなほどです。ですから、強烈な筆力で読者を驚かすような力業ではないのです。それなのに、ジャンヌの行動と一体化して突っ走る『レベレーション』の線には、神が憑依(ひょうい)した者だけがもちうるような絶対的な説得力があって、それを読む私たちもジャンヌと一緒に走り、祈り、戦うような気持ちに攫(さら)われていくのです。

 特筆すべきは、ショートカットで男装したジャンヌの凛々(りり)しい美しさです。『日出処(ひいづるところ)の天子』では女性のように美しい聖徳太子を描いて性の境界を超越した作者ですが、今回は逆に、女性性を脱ぎすて、戦う天使のような中性性を身にまとうヒロインを描いています。そのジャンヌの表情の千変万化に魅せられます。神との交流の恍惚(こうこつ)から、激烈な怒りや絶望的な悲しみまで、このマンガはほとんど戦慄(せんりつ)的なリアリティをもって、ジャンヌの人間像をくっきりと定着しています。必読です。=朝日新聞2021年2月10日掲載

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