本棚の1スペースを借りて、憧れの書店主に――。「シェア型本屋」と呼ばれる新たなスタイルの古書店が、島根県出雲市のカフェの一角に開店した。店名は「つながるブックス」。企画者は個性豊かな本棚を、人と人とがつながるきっかけにしたいと期待を込めている。
出雲市役所のほど近くに昨年9月にオープンしたカフェ「オトナキチコーヒー」。経営者の坂根めぐみさん(43)が物置として使われていた店内の一室に手作りの本棚を置き、1月下旬からSNSを通じて「書店主」になりたい人32人の募集を始めた。2月中旬までに約10人が本棚を借りているという。
書店主は月額2500円を支払って32センチ四方に仕切られた棚を借り、売り上げの全額を受け取る。本の販売はカフェのレジで行うため、店番をする必要もない。手書きのポップを置いたり、SNSのライブ配信で本棚や店主自身を紹介したりすることで、宣伝や発信の場にもできるという。
地方の本屋 減っているけれど
出店者の個性に応じて、本棚に並ぶ書籍は様々だ。
現役医師の棚には東洋医学や漢方に関する本が並び、ビジネス書が並ぶ棚はGoogle社員がセレクトした。大好きな映画や旅行の本をそろえた主婦もいる。
出雲大社近くの神門通りでリラクセーションサロンを営む川島桜さんも出店者の一人。アロマテラピーの関連書籍をそろえた。「オンラインで完結することも多い時代に、本という手でふれられる情報を発信できることがおもしろい」
坂根さんは東京・吉祥寺のシェア型本屋「ブックマンション」の取り組みに共感し、企画をはじめた。「地方では本屋が少なくなっているが、ネット書店と違い、店舗では自分の興味のある本以外にも出会える」と坂根さん。「ふらっと店頭に立った店主が直接本をオススメしたり、お客さんが本の感想を店に置かれたノートにつづったり。新たなつながりが生まれる場所にしていきたい」
(清水優志)朝日新聞デジタル2021年02月24日掲載