「詩人になりたいわたしX」書評 いい「先生」に巡り合えたら
評者: 温又柔
/ 朝⽇新聞掲載:2021年03月20日
詩人になりたいわたしX
著者:エリザベス・アセヴェド
出版社:小学館
ジャンル:物語・おはなし
ISBN: 9784092905887
発売⽇: 2021/01/20
サイズ: 19cm/423p
詩人になりたいわたしX [著]エリザベス・アセヴェド
シオマラは十五歳の女の子。頭文字はX。
十二歳の誕生日に双子の兄から「おまえはあまりしゃべらないから」と革の表紙のノートを贈られて以来、「こういえたらよかったのにってことを全部」「書いて、書いて、書く」日々だ。
ガリアーノ先生は、「世間の固定観念をはしからつかまえて、まとめて片腕でぎゅうぎゅうしめあげて、そこから真実をしぼり」だしたようなシオマラの文章を肯定し、その調子で「ありのままの自分を解き放つ」ために書くべきだと伝える。先生の支持はシオマラを勇敢にする。
「わたしはX、自分を表すしるし。線の上に自らを刻みつける」
詩人・Xの誕生を見届けたあと、あまりしゃべらなくても、一見、大人に逆らっているようでいても、「おまえの考えることは大切だといって」くれる誰かとの関係を切に欲する全ての子どもたちが、彼や彼女の「ガリアーノ先生」と巡り合えるように祈りたくなる。