「おねぼうさんはだあれ?」
うさぎのミミナちゃんは「おねぼうさんは だあれ?」とやさしく声をかけながら、冬ごもりからなかなかおきてこないお友だちの家をまわります。みんなまだまだ、ねむいみたいですね。ミミナちゃんは、そっと、枕もとに春のお花をおいてみんなを待ちます。
やわらかな言葉の中で、アルミ板をきりとってかたどられた動物や草花たちが、春の日差しそのもののような色彩をまとい、ぽかぽかとこちらを照らします。じんわりとあたたかく、待ちこがれた春への賛歌のよう。
春がはこんでくるなつかしいだれかのにおい。春っていいな。大好きなひとに会いたいなあ。ぎゅっとちぢこまっていた五感が、一気に目を覚ますのを感じます。(片山令子文、あずみ虫絵、学研プラス、税抜き1400円、3歳から)【丸善丸の内本店・児童書担当 兼森理恵さん】
「おじいちゃんのたびじたく」
深夜。静かなおじいちゃんの家に、ほわほわ白いお客さまが旅のお迎えにやってきます。おじいちゃんは歓迎し、へそくりの小銭を集め、ゆで卵を包み、旅じたく。「むこうについたら おくさんが むかえに来てくれますよ」と聞いて、ますますはりきり、ひげそり、あかすり、顔パック。いっちょうらを着て、春の朝に旅立ちます。現世との別れを、大好きな人に会いに行く旅として、あたたかく朗らかに描いた韓国絵本。室内の様子や習慣、死生観など、隣国との相違や共通点を発見し、親しみと興味がわくでしょう。(ソ・ヨン文・絵、斎藤真理子訳、小峰書店、税抜き1400円、5、6歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】
「きみのいた森で」
親しかった祖父を亡くした孤独な少年スチューイは、最近引っ越して来た同い年の少女エリーと仲良くなり、よく森の中の秘密の場所で話をするようになる。2人ともお気に入りのその場所では、時々不思議な現象が起こるのだが、ある日スチューイの目の前でエリーの姿が薄れ、ふっと消えてしまう。一方エリーの世界からはスチューイが消えていた。なぜそんなことになったのか? 分離した世界を元に戻すにはどうしたらいいのか? 謎にひかれてどんどん読めるミステリー。(ピート・ハウトマン作、こだまともこ訳、評論社、税抜き1600円、小学校高学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】=朝日新聞2021年3月27日掲載