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「学校、行かなきゃいけないの?」書評 大切にされない場にはいないで

評者: 柄谷行人 / 朝⽇新聞掲載:2021年04月10日
学校、行かなきゃいけないの? これからの不登校ガイド (14歳の世渡り術) 著者:雨宮処凛 出版社:河出書房新社 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784309617282
発売⽇: 2021/01/26
サイズ: 19cm/211p

学校に行かなくても、選択肢は意外にたくさんある。フリースクール、学習支援、心の専門家…。学校から遠ざかった人々、学校のあり方に疑問を持って独自の取り組みを始めた人々にイン…

学校、行かなきゃいけないの? これからの不登校ガイド [著]雨宮処凛

 日本では近年、小学校から大学にいたるまで、不登校の人口が増えている。少子化にもかかわらず、小中学生だけで全国に一八万人いるとされる。本書は、不登校の実情を、当事者、保護者、支援者などの多彩な体験談を通して示している。著者自身も、学校に行くことが極めて苦痛で、未(いま)だに「後遺症」が残っているという。ちなみに私も、幼稚園で「登園拒否」をし、小学校でも登校はしたが、二年間口をきかなかった。それでも何も問題はなかった。ただ、それは後遺症として今も残っているが。
 不登校は以前からあったが、大きな社会問題となったのは、一九八〇年代、大学への進学が一般化した時点からだろう。いいかえれば、日本人の生き方が学校制度を通して平準化された時点である。不登校は、そこから外れることを意味する。ゆえに、非難され、いじめられる。八〇年代、不登校の子は、「根性を叩(たた)き直す」と戸塚ヨットスクールなどの「悪質な矯正施設」に送られることもあった。以後、そんなことはなくなったが、不登校、ひきこもり、その結果としての自殺が増加してきた。学校に行かねばならないという圧力が増大したからだ。それは、日本の経済が悪化し、格差社会があらわになってきたこととも関連している。
 九〇年代以後、それに伴う制度上の変化があった。たとえば、文部省はフリースクールなど学校外の教育施設に通っても、学校への「出席」と認めることにした。校則をなくした学校もある。遅刻も授業中の仮眠も許される。こういう改革をもっと進めることが望ましい。しかし、本書には、著者自身の経験から得られた考えがある。一般に、不登校やひきこもりをする者に対しては、「逃げるな、強くなれ」といわれるのだが、著者はいう。「あなたを大切にしてくれない場所にいてはいけない」。そしてそれが「人が生きる上で、一番くらいに大切なことだと思う」と。
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あまみや・かりん 1975年生まれ。作家・活動家。著書に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(JCJ賞)など。