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『「よそもの」が日本を変える』 環境価値のものづくり、都会から参画

 「地域活性化によそ者、若者、ばか者が必要」というフレーズは、近年よく耳にしてきた。中でも、今注目されているのは「よそもの」の存在だ。コロナ禍で人びとの暮らしや働き方が激変。デジタル化が急速に進んだことで在宅勤務が容易になり、柔軟な働き方を求めて地方へ向かう人も増えている。

 JR東日本でエキナカや地域活性化プロジェクトを立ち上げてきた著者は、世界的な環境意識の高まりで、消費者の行動も変わってきたという。選ばれているのは、循環するもの、共感できるもの、サステイナブルなストーリーが語れるもの。日本の地域には、そういう食材やものづくりの文化が、まだ豊富に残っている。そこに都会の「よそもの」が参画することで、新たな価値を得て成功した事例がいくつも紹介される。

 たとえば、著者が関わった青森のシードル工房は、傷ついたりんごで付加価値の高いシードルを製造。一定の時間が経ったものはアップルブランデーに姿を変える。ロスのないものづくりと、観光資源を一挙に手に入れた形だ。柔らかな視点と行動力があれば、誰にでもチャンスはある。今いる場所から、一歩踏み出す勇気が湧いてくる。=朝日新聞2021年4月17日掲載