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「秋山邦晴の日本映画音楽史を形作る人々/アニメーション映画の系譜書評」 70年代の名作、具体的に実証

評者: 石飛徳樹 / 朝⽇新聞掲載:2021年05月08日
秋山邦晴の日本映画音楽史を形作る人々/アニメーション映画の系譜 マエストロたちはどのように映画の音をつくってきたのか? 著者:秋山邦晴 出版社:DU BOOKS ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784866471075
発売⽇: 2021/02/19
サイズ: 21cm/16,635p

「秋山邦晴の日本映画音楽史を形作る人々/アニメーション映画の系譜」 [著]秋山邦晴 [編]高崎俊夫、朝倉史明

 「七人の侍」など、黒澤映画の音楽で知られる早坂文雄が「十八世紀はオペラの時代、十九世紀がバレエの時代とすれば、やはり二十世紀は映画の時代でしょう」と述べている。
 考えてみれば、「映画音楽の名作」は20世紀にほぼ出尽くしている。ポピュラーだというだけではない。芸術としてもそうだ。現代音楽の先頭走者たちが娯楽映画にも先鋭的な音楽を提供していた。
 本書は音楽評論家の秋山邦晴が1970年代、キネマ旬報に連載した文章をまとめたもの。早坂を始め、伊福部昭や武満徹ら多くの作曲家へのインタビューを絡めた評論になっている。
 秋山は抽象的な印象でなく、具体的に実証で説得する。「羅生門」の音楽を早坂がどう作ったかを分析した章を読むと、必ず映画を見たくなる。その誘引力は映像について書いた文章の比ではない。映像の記憶は残っていても、音楽の使われ方を覚えている観客はとても少ないからである。