みずみずしい、といった言葉だけでは形容できないほどの生動感がある。1987年生まれの画家・近藤亜樹が2019年冬から20年春にかけ、故郷・札幌市で描いた50点による作品集に、そう思わずにはいられない。
奇妙な味わいの物語性を秘めた大作を手がけてきた近藤だが、育児をしながら生活空間で制作したためか、小品が多く、さらに構図もシンプルになっている。花や果物、鳥、小動物、そして母子像や子供といった存在が真正面から画面いっぱいに描かれている。
何の迷いも感じさせない筆が鮮やかすぎるほどの色彩を載せ、うねり伸びてゆく。スリリングなタッチは、印刷物なのに絵の具が手に付くのではないかと思わせる生々しさだ。
一方で秋田蘭画(らんが)のようにクローズアップされた対象と背景の対比を見せたり、少女像の奥に山並みを配して「モナリザ」的構成を見せたり。その堂々たる構図が、描く喜び、生きる喜びを、倍加させている。=朝日新聞2021年5月15日掲載