古文や漢文などの国語の古典学習は、高校生にとって本当に必要なのか――。高校で国語を学ぶ生徒自身がそんな問題提起と向き合い、公開で議論する場を設けた成果をまとめた書籍『高校に古典は本当に必要なのか』(文学通信)が5月に出版された。
昨年6月に国際基督教大学高校(東京都)で生徒ら有志が開いたオンライン公開シンポジウムを書籍化した。当時「古典が大好き」な高校3年生だった長谷川凜(りん)さんが発案し、生徒らと国語担当の教員が手弁当で準備した。「古典教育は必要ない」とする否定派と「必要だ」と考える肯定派の論点を整理し、現役高校生へのアンケートなどをもとにディベート形式で討論した。本には、シンポ終了後に寄せられた様々な声も収録した。
シンポ運営や本の出版にかかわった同校国語科教諭の仲島ひとみさんは本の中で、当初の「必修か選択か」という科目再編の議論や「学ぶ意義があるのか」という今回の議論をふまえると、今後は広く支持される古典教育に向けて学習指導要領や教科書、授業、大学入試などを改善する必要があるとの認識を示している。
文学通信の担当編集者は「コロナ禍でオンライン環境が整い、アイデアと意欲さえあれば生徒自身が議論の場をつくることが可能になっている。この本を国語や古典教育のあり方をめぐる議論を深める土台にするだけでなく、イベントや討論の場を運営するマニュアル本としても活用してもらえれば」と話している。=朝日新聞2021年7月7日掲載