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「立花隆 長崎を語る」書評 知の巨人の原点に浮かぶ実像

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2021年11月13日
立花隆 長崎を語る 長崎が生んだ「知の巨人」 追悼と鎮魂、そして人類 著者:立花 隆 出版社:長崎文献社 ジャンル:伝記

ISBN: 9784888513661
発売⽇: 2021/09/13
サイズ: 19cm/235p

「立花隆 長崎を語る」 [編]長崎文献社編集部

 立花隆は長崎の生まれである。立花は戦争体験の継承に力を入れるようになってから、この地に生を受けたことの責任感を強く自覚している。
 すでに大学生の時に原水禁世界大会やヨーロッパの反核運動に参加している。本書は「長崎」を原点に、戦争体験や記憶を次世代に伝えるとともに、広く書き残す運動も提言している。長崎での講演では、クリスチャンだった両親について語り、人生観など影響を受けたことがうかがえる。
 父親は、アウシュビッツ強制収容所で餓死刑を宣告された男性の身代わりになったコルベ神父と接点があったとされる。立花がアウシュビッツなどを問うていく時の近接感と重なり合うように思える。
 長崎で立花と接した人たちの思い出の記を読むと、東京とは異なる関係があるように見え、この原点から世界に非戦の志を発しようとしていた立花の実像が浮かび上がる。その意をくみ取るのが務めだと実感する。