ISBN: 9784790717645
発売⽇: 2021/11/19
サイズ: 19cm/193p
「私は男でフェミニストです」 [著]チェ・スンボム
フェミニストの男。その存在に違和感を抱く人がいる。なぜ男なのにフェミニズムを? 女に褒められたいから? それって下心? 疑問を解消したければこのエッセーを読むといい。
「男フェミ」の著者は、韓国の男子高に勤める30代の教師。国語の授業を通じて生徒にフェミニズムを熱心に伝えるが、初めからそうだったわけではない。
大学時代の彼は、フェミニズムを学ぶ後輩男子に「男なのに何のためにフェミニズムの勉強をしているの?」と尋ねている。彼にも「フェミニズムは女のもの」と思っていた時期があったのだ。そんな彼に後輩はこう告げる。「男だからよくわからないんです、学ばないと」……たしかにそうなのだ。自分には関係ないと遠ざけたり、論拠不明の私見を述べたりと、フェミニズムをよく知らない人ほど、自力でなんとかしようとする。でも、本当は勉強した方がいい。その方が迷子にならないで済むから。
「他人のことだから無関心でいられたが、他人のことだから学ぶこともできそうだった」と考えた彼は、フェミニズムのお陰で家父長制に組み敷かれてきた母の人生を再検討することができたし、国語の教科書に載っている小説の主人公が実は女の人にひどいことをしていると感付くこともできた。フェミニズムという別視点を手に入れたことで、自分を取り巻く世界の見え方が変わったのだ。
親族の集まりで、女たちに交じって家事をやっただけなのに、みんながざわついたという話が「あるある」すぎて笑ってしまった。日本のお正月や法事などでもよくある風景だ。男が飲み食いしたものを男が片付けるのはおかしい、という感覚こそがおかしいのに。
些細(ささい)に思えるような、だけど大事な場面を少しずつ変えていこうとする著者をついつい褒めたくなるけれど、そうやって男を持ち上げるのもよくない。彼は、それが当たり前の世の中を目指しているのだから。
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Seungbum Choi 1984年生まれ。韓国・江陵市の明倫高等学校教師。共著に『フェミニスト先生が必要』(未邦訳)。