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佐久間宣行さん「佐久間宣行のずるい仕事術」インタビュー 自分が楽になるためには

佐久間宣行さん

 万人受けはしないかもしれない。でも、刺さる人には刺さる。「ゴッドタン」など、テレビ東京でそんなバラエティー番組をいくつも手がけた。現在はフリーで活動するプロデューサーがまとめた本書は、意外な一節で始まる。「自分は芸能界もテレビ界も苦手っぽい。テレビ東京に入社してすぐに気づきました」

 入社した約20年前、仕事に自信が持てず、「どうせ俺できないし」と卑屈になった。また、当時のテレビの現場は「パワハラとセクハラの嵐」だったといい、そんな世界に嫌気も差した。

 転機はドラマのアシスタントディレクターをしていた時に訪れる。小道具として「サッカー部の女子マネージャーの手づくり弁当」を用意するように命じられた。「よくある雑務」だが、単に弁当をつくるのではなく、サッカーボールに見立てたおにぎりをつくることを思いついた。アルバイトをしていた居酒屋の厨房(ちゅうぼう)を借り、明け方までかかって完成させると、監督が注目してくれ、弁当をメインにするよう台本が変更された。以来、「よくある雑務」を独自の「自分の仕事」に変えることで「呼吸が楽になった」という。

 ストレスから逃れるために、数々の「作戦」を「死ぬほど考えた」。その一つとして、「仕事と他人に誠実であること」を心がける。仕事で自分の色を出しつつ、仲間を大切にする。それは、自分が楽になるための「ずるい」計算でもある。企画は入念に準備し、出演する芸人たちと信頼関係を築き、人気番組を連発してきた。

 自分が楽になるための作戦を紹介するのは、SNSで仕事の悩み相談が後を絶たなかったから。「どんな仕事でもまずは自分を大事に。組織で働いている人には、どれかは役に立つんじゃないかなと思います」(文・野城千穂 写真・篠田英美)=朝日新聞2022年4月23日掲載