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「スネークダンス」ほか子どもにオススメの3冊 歴史ある建物と少年の出会い

「スネークダンス」

 圭人はイタリア生まれで、ローマの遺跡や街並みをスケッチするのが大好きな14歳。交通事故で父が亡くなってしまい、母と一緒に日本へ帰って東京の下町に暮らすことに。圭人が、古い建物や街並みをスケッチしていると、工事現場の囲いにスプレーで落書きをしている人を見つける。それは、同じ中学校に通う女の子、歩だった。

 彼女は木造建築や日本の古い技術に詳しく、圭人と意気投合する。歩と関わっていくなかで、圭人が見つけた夢とは……。

 読み終えると、タイトルのスネークダンスとは、踊りと法隆寺の五重塔に使われている心柱の仕組みとを重ね合わせていることがわかり、そのアイデアのすばらしさに心も躍る。(佐藤まどか作、小学館、1540円、小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「きりんのまいにち」

 きりんとその仲間の生きものたちの、それぞれにとってのリアルで穏やかな日常を描いた15編。だから、人間の私たちが読むとちょっぴり不思議でおかしみを感じるかもしれません。おのおのの性格や特性があるけれど、絶妙な距離感で他者を否定せず自身のペースで生きている生きものたち。個性を認めるって簡単に言うけれど、相手を完璧に理解できなくてもしかたない。決して拒絶することなく慮(おもんぱか)りながらその存在を尊重し、ゆるくつながる。こうありたいですね。読後は心に少しスペースが生まれますよ。(二宮由紀子作、大野八生絵、光村図書、1650円、小学校低学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

「た」

 表紙に大きな「た」の文字。開くと、最初が「たがやす」で、「たいへん」や「たわわにみのる」を経て、おしまいが「たべる」。出てくる言葉が全部「た」で始まるし、「た」は田にもつながっている。この絵本には、田畑を耕して世話をして取り入れて食べるまでの過程が凝縮されている。人々は、殺虫剤を使わないとやってくる虫や動物から作物を守るために「たたかう」し、収穫の祭りも大いに「たのしむ」。絵から生命のリズムが伝わり、エネルギーを感じとれる。(田島征三作、佼成出版社、1430円、3歳から)【翻訳家 さくまゆみこさん】=朝日新聞2022年6月25日掲載