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「T for Me ピーター・バラカン Tシャツ・コレクション」 刻印された時代と社会

『T for Me』から。著者が監修する音楽祭「Peter Barakan’s Live Magic! 2022」は22日、東京・恵比寿のザ・ガーデンホールで開催

 音楽の紹介を中心に、ラジオなどで幅広く活躍する著者は、その初期、音楽愛好家と名乗っていた。「評論家」ではないことを明示するための苦肉の(?)策だったが、今ではブロードキャスターというピッタリの肩書きがある。だがそんな彼は、実は正真正銘の「Tシャツ愛好家」だった。

 愛用のTシャツが200着以上、コメントつきで並ぶ。専門の音楽にまつわるのが多いのは当然だが、本当にいろんなデザインがあって、見飽きない。中には「これを着るのか!」と思うほど派手なものもあり、Tシャツの奥の深さを感じる。1点モノではないから、世界のどこかで、誰かが、同じTシャツを着ているはずだ。だが、Tシャツのコレクションとなると、その人だけの個性が出る。このコレクションの組み合わせはこの世にひとつしかない。著者の生きてきた時間そのもの、そう言い換えることもできるだろう。大げさかな? いやいや、人生がTシャツの形をして目の前にあるなんて、カジュアルでかっこいいような気がする。図版は、著者がキュレイターを務めている音楽祭「Peter Barakan’s Live Magic!」のもの。コロナ禍で、オンラインでの開催となったため、音符がウイルスをやっつけている。

 Tシャツは服だけど、グッズでもあり、お土産にもなり、時に意思表示の場所をも提供する。胸もとやお腹(なか)に(たまに背中も)時代をしっかり刻印している。=朝日新聞2022年10月15日掲載