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「彼女たちの山」書評 女性登山家の言葉に励まされる

評者: 長沢美津子 / 朝⽇新聞掲載:2023年04月29日
彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか 著者:柏 澄子 出版社:山と溪谷社 ジャンル:趣味・ホビー

ISBN: 9784635172059
発売⽇: 2023/03/14
サイズ: 19cm/255p

「彼女たちの山」 [著]柏澄子

 それが未踏の頂を目指して、巨大な岩壁を越えた遠くの彼女たちだとしても、あふれてくる言葉には「私も」と励まされる。
 「自分の足で登って、自分の足で山頂に立つのはほんとうに気持ちよい」
 「一人でがんばりすぎたって空回り」
 「時間はかかるけれど、非力な女性にだってできる」
 登場するのは世界的なクライマー、山小屋の主人、山岳部の元主将……。「男女共同参画」がいわれ「山ガール」が流行語になった平成という時代と、山と向き合う個の物語を行き来しながら筆は進んでいく。
 著者は登山ガイドとしても活動するライターだ。いま「女性」を切り取る意味に悩んだというが、誰もに同じ姿を見せてくれる山の世界と、性差や俗世と無関係でいられない山の社会の両方を見てきたから書けた大事な記録だと思う。
 平成の次に、どんな山の景色が広がるのか。楽しい気持ちで山を見上げているような、読後感がいい。