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塩田雄大さん「変わる日本語、それでも変わらない日本語」インタビュー 言葉の変化がかわいくて

塩田雄大さん

 〈私情により欠席させていただきます〉

 この「私情」の使い方を初めて見た時は驚いたという。これまで「仕事に私情を差し挟んではいけない」というふうに使われてきた。だからダメだと言いたいのではない。「○×にはしたくない。こんな言葉が生まれたとか、使い方がこう変わったとか探すのが楽しいわけです」

 新しい用法に出会うと、そこだけ浮き出て記憶に残る。「おっ!と、たぶん新種の植物や虫を見つけるのと一緒。変化する言葉がかわいくてしょうがない」とにっこり。

 本書はNHK放送文化研究所の調査をもとに61の言葉について考察する。「改札らへんで待ってます」と言う? 「せいぜいがんばって下さい」と言われるとイヤ? 世代や地域によるとらえ方の差が興味深い。

 「言葉の現状を知った上で、自分はこう使おうと考えてほしい。そしてあなたの言い方も否定しないという人が増えれば、もめごとが少ない世の中になるのではないか」

 幼稚園のころ、百科図鑑の英語の巻でゾウの絵に「エレファント」とあるのを見て混乱した。「ぞう」ではないのか。言葉に目覚めた出発点だ。外遊びより、漢和辞典をひいて遊ぶのが好きだった。高校では中国語にエスペラント、スペイン語、フランス語、ドイツ語など次々学び、その後、韓国に1年間留学もした。

 言葉への並々ならぬ好奇心をもって、1997年からこの研究所で日本語研究を続ける。NHKラジオ深夜便でも月1回、日本語について語り、明るい声がおなじみになった。

 いま、みんなが言葉を尽くし、もっとコミュニケーションをとらないといけないと感じる。「わかりやすく誤解のない言い方をするにはどうしたらいいか。手持ちの表現を増やしたくて研究しているんです」=朝日新聞2023年5月20日掲載