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賀来「同人女アパート建ててみた」 夢物件の経営物語、連帯に胸熱く

©賀来(秋田書店)2023

 住まい選びの基準は人それぞれ。趣味に生きる人なら自分なりの“夢の部屋”を思い描いたことがあるだろう。が、現実にはなかなか理想を満たす物件は存在しない。ならば自分で建ててしまえ――というのが本作だ。

 銀行勤務の傍ら同人誌活動をしているA子が建てたのは「小説・漫画・衣装制作等を趣味とする」女性限定のアパート。実家所有のアパートの土地を担保に5000万円の融資を受けて建て替えた。共用スペースには複合機や作業机、ホームシアターも完備する。同人仲間の女子たちも垂涎(すいぜん)の夢物件だ。

 ところが、相場より高めの家賃設定もあって、なんと入居者ゼロ。家賃収入のないままローン支払いだけがかさんでいく。しかし、そこからの同人仲間の行動が天晴(あっぱ)れだった。速攻で宣伝画像を作りネットで拡散。チラシも作ってコミケで配布。さて結果は……?

 単なる夢物語ではなく不動産経営の一案として興味深い。が、それより何より一連の同人女たちの連帯に胸が熱くなる。通じる者同士の会話の妙に笑い、みんながA子に協力する理由にうなずく。不動産会社の担当女性の誠実な対応もナイス。入居者側の事情も含めシスターフッドの輪は広がっていく。=朝日新聞2023年7月15日掲載