まさにタイトル通り、目にする風景を見事にアニメ風に撮った写真集です。いやむしろ日常の中にアニメの背景画を見いだす視線が生み出した一冊、というべきだろう。アニメが現実に先行している点が、とても興味深い。
とりわけ叙情的で物語的な雲が広がる大空が、水たまりや水田に映り込むタイプの写真(表紙にも採用されている)を見ると、さほど詳しくない目から見ても、「新海誠監督の映画みたいだなあ」と感じる。
と思ったら、撮影者・著者のShotaさんは正直で、刻一刻と表情の変わる「空」が好きで、新海作品の「世界観にとても惹(ひ)かれ」ていると記している。
アニメ風に見せるための色調補正などの方法も正直に明かされているが、最もこだわっているという構図が見どころだ。奥にゆくほど狭まる一点透視的な表現はもちろん、手前に桜の花や自転車を大きく置く手法も、歌川広重の浮世絵や秋田蘭画さながら。アニメを見るとき、今度はそんな「構図の歴史性」が気になってくるに違いない。=朝日新聞2023年8月19日掲載