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heisoku「春あかね高校定時制夜間部」 重い現実、温かいツッコミで包む

(C)heisoku/KADOKAWA

 物語の舞台は定時制高校の夜間部。働きながら通う者だけでなく、さまざまな事情でこの学校を選んだ面々の学園生活が描かれる。基本的にはコメディで、個性的で癖の強いキャラクターたちが次々と登場し、夜間部らしい日常のちょっとしたエピソードが積み重ねられていくのだが、実際の読み味はなかなか複雑だ。昼にバイトをしながら勉学に励む者、元ホストの青年、メンタルの病を抱えている中年、ひきこもり経験者など、ばらばらな学生たちのさりげなく描かれた細部に、それぞれの抱え込んでいる事情や屈託などのリアリティが詰まっていて、どこか身につまされる。ほんのささいなこと、しかしその人にとっては決定的に大切なこと、その何かがふと読む者の心に突き刺さるのだ。

 ヒリヒリするような笑いの感触の一方で、物語は決して深刻になりすぎない。重くて厳しいはずの現実を、著者は温かいツッコミで包みこんでいく。強すぎる個性に悩んでいたり、生きにくかったりするのは、考えてみれば誰にでも共通するところのある問題だ。本人らしく折り合いをつけようとする姿をありのままに受けとめ、日常の1コマとしてとらえる優しい視線が、読後に心に残った。=朝日新聞2023年9月2日掲載